『よるのようちえん』感想  

(作:谷川俊太郎、絵:中辻悦子、福音館書店、1998年)夜の幼稚園には多くの幽霊?たちが登場する。子どもにとって深夜とは不思議で不気味な時間帯だ。何かがいるはずである。幼稚園という場所は子どもたちと幽霊たちとで共有しているのだ。幽霊といっても楽しそう。怖くはない。すっとさん、さっとさん、もっとさん、じっとさん。おそらく彼らの正体は、昼間の子どもたちの楽しい遊びの残像あるいは余韻であろう。幽霊たちの色や形は、園の施設ブランコや滑り台の形を反映しているように見える。また昼間に飛び交った言葉がそのまま「すっとさん」「じっとさん」という名前になっているのかもしれない。
 「ようちえんには だれも いません みんな うちへかえりました」というフレーズで始まります。「そっとさんが かおをだしました」すっとさんさっとさんじっとさんぜっとさん(Zの文字)たくさんの幽霊?が登場します。「すっとさんとぱっとさんは ふたりで ぱしゃりんこ」これはプールで遊んでいるところです。「ぜっとさんとそっとさんとぽっとさんは さんんいんで こぺらけぺら」これは園庭のイスに腰掛けておしゃべりしているところです。幽霊?たちが集まって、楽しそうに遊んでいます。「そらがあかるくなってきました あれれ みんながどこかへきえちゃった」さて大人にとっての深夜というのは、たんなる時間帯であり、その時間に起きているということは、疲れるだけのことです。静かな時間、休息のための時間なのです。子どもにとっては、謎の不思議な時間です。自分の知らない時間なのです。しかも世界は真っ暗なのです。そこには、何かがいるのです。・・・無ではないのです。彼らは特別に何かをしているわけではなく、うろうろしたり、集まってみたり、遊んでみたりするだけです。すると多くの読者は次のようにとらえます。子どもたちだけの幼稚園ではない。ほかの誰かがいるんだ!!!子どもたちの生活空間であり、遊びの場である、その場所に、誰かがいるのです!!幽霊かもしれない。しかし、実際にこれを子どもたちに読み聞かせすると、子どもたちの間に、怖いという気持ちは、湧いてきません。子どもたちは、怖いどころか、楽しい気持ちになるのです。
 それはなぜでしょうか?一つは、そこで何かをたくらんでいるわけではなく、誰かを困らせようというものでもない。そのあたりの楽しい雰囲気にあると思います。もう一つは、これは彼らが何者かということに関係していると思います。彼らの正体は何でしょうか?おそらくは、昼間の子どもたちの楽しい遊びの、残像、余韻だと思います。この絵本で描いているのは、幼稚園に通っている子どもが、幼稚園の一日は、とても楽しかった、また明日も遊びたい、という心境にある、ということなのです。絵本の読者である子どもも、おそらくそれが分かるのです。
 この絵本の魅力は、「色」です。本物の幼稚園の様々な場所を、おそらく昼間に撮影しています。その写真は白黒です。それほど暗いわけではないのですが、白黒ということで、夜を表現できています。その写真に、色鉛筆や絵の具で色を付けているのです。色というのは、子どもたちの想像力を表現しているようです。さて、ここで気づくことがあります。どうも、幽霊?たちの色や形は、園の施設の色や形を反映しているようなのです。表紙に園の門が赤く塗られています。その赤がそっとさんに反映されています。ブランコの黄色が、すっとさんに反映されています。登り棒の赤色は、じっとさんに反映されています。滑り台がゼットさん。ひょっとしたら、幼稚園内の様々な施設や備品に、子どもたちの遊びの余韻が加わって、それで飛び出したのが「彼ら」なのかもしれません。
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Posted on 2012/07/11 Wed. 23:09 [edit]

category:   2) 恐怖の世界へ

thread: 絵本 - janre: 本・雑誌

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