『ママ、あててみて!』感想  

(作:末吉暁子、絵:林明子、偕成社、1976年)みこちゃんがママにクイズを出す。みこちゃんはヒントを出し、ママは答える。りんご、おはな、ぼうし、ふうせん等。正解はおひさま。最後のページではそれら赤いもの全てが一緒になって遊びにいく。答えを用意して問いを発し、しかもヒントを出すというのはかなり高度な技術である。みこちゃんは大好きな物に囲まれ、自分の世界を作り、そこに大好きなママを招待している。子から親への愛情表現とはこういうものだ。スキとは言わずに今を楽しもうとする。ママがゆったりした気持ちで答えているところもよい。子どもなりの時間と空間を大切にしたい。


 ある日、女の子(みこちゃん)がいう。「ママ! いまね、だれかさんがね、いい おてんきに なったから あそびましょって、きたの。 だれだか わかる? あてて みて!」部屋の向こうにいる女の子がドアを少しだけ開け、こちらを覗く。母親は「さあ、だれかしら」と言いながら、答を探す。「みこちゃんのだいすきなうさちゃんまくらでしょ」「ちがう ちがう。まるくてね、あかいもの。」「てんとうむしでしょ。」「ざんねんでした。もっとおおきいの。」そんなやりとりをしながら、ドアが少しずつ開いていく。少し開いたドアの向こうにヒントがある。りんご?おはな?あかい、ぼうし?ふうせん?正解は「おひさま」である。「あたり! おひさまが、みこちゃん、あそびましょって きたの。 あたし、おひさまと かけっこ して くるわ。」最後のシーンでは、おひさまがニッコリ笑う。
 物語だけを見れば、女の子がクイズを出して、正解は太陽。それ以外は不正解ということになる。しかしよく見ると、最後のシーンでは、うさちゃんまくら、てんとうむし、りんご、おはな、ぼうし、ふうせん、みんなであそびにでかける。ということは、まんざら不正解とまではいえないのである。太陽が正解で、それ以外が不正解というのはどういうことだろうか? それは、うさちゃんまくらやりんごなどは、もともとみこちゃんが持っている、みこちゃんの近くに存在するもの。太陽は、遠くに存在するもの。つまり「太陽が遠くからやってきたから、身近な友達みんなで遊びに出かける」という形の回答になると思う。みんな、といっても、人間はいない。一人で遊んでいるのだが、みこちゃんの意識の中では、たくさんの友達と楽しく遊んでいることになる。ここに何か寂しいものを見出すことも出来るかもしれないが、私は底抜けの明るさを読み取る。
 この絵本全体を通して「赤」が焦点化される。よくみると、みこちゃんの洋服、ベビーカー、スコップ、ボールあらゆるものが赤。よほど赤が好きなのだろう。太陽を「赤」と表現しようとするのは子どもの自然な感性か。
 重要なことの一つは「問い」である。答を知っている人間が、答を知らない人間に対して問いかけをする。まさにクイズだ。授業における「発問」とも似ている。ここでは、女の子が母親に対して問いかけるのあるから、少しだけ女の子の方が優越している。上からの目線で、さあ、分かるかなーと問いかける。子どもがおとなをいじる、というような関係を一時的に成立している。自分は答えを知っていて、答えを知らない相手の立場に立って、楽しいやりとりをしようとする。女の子は、高度で複雑なことをやっていることになる。裏表紙には、おかあさんが料理をしながら振り向いている姿が描かれている。みこちゃんは、料理をしているお母さんに向かって、語りかけていたのである。頭の固い母親であれば、「そんな遊びには付き合ってられません!」「お母さんは忙しいんです!」という具合で答えてしまうかもしれない。本書では母親は余裕の心をもち、とてもあたたかい。この親子の距離感はとても大切だ。愛情いっぱいに包まれて育つ。
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Posted on 2012/06/24 Sun. 23:49 [edit]

category:   2) 偉大なる母の力

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