「ニュース番組で街の人の意見を聞くのはなぜ?」考  

 ニュース番組で街の人の意見を聞きます。特にNHKがそれをよくやります。税金が上がるというニュースに街の人の反応「困りますねー」国会が空転しているというニュースに街の人の反応「もっとしっかりしてほしいですねー」ニュースの司会者が、ニュースを取り上げた後に、自分の感想や印象をのべるということもあります。なぜ、こんなことをするのでしょうか?製作者サイドの意図はこうでしょう。
・一つの事実だけを報道するのではなく、市民の反応も合わせた方が、豊かな番組になる。
・政策一つにしても賛成反対様々な意見があるのだから、それも合わせて議論すべし。
・市民の皆様には多くの言いたいことがあるのだから、それも反映させるべし。
 こんな意図だと勝手に解釈しています。(NHKは、市民参加型の討論番組をよく放送しています。)しかしよく考えてみるとこれには問題があると思います。
 問題点1)問題は、それがニュースの一部だということです。本来、ニュースと解説は基本的には別モノです。「あ、そういう事実なんだな」と思いながら見るのと、「あ、解説や討論なんだな」と思いながら見るのと、では、大きく性質が異なってしまいます。両者は厳密に区別しなければなりません。混同してしまうという点で危険です。例えばギリシアの経済危機において、ギリシア国民がどのような意見であるのか?それは事実、ニュースとして成立します。ギリシア国民の意識がどうなっているかは、私たちには分からないからです。そして私たちとは一定の距離があるからです。噴火で火山灰が降ってきたときに、その現地の人々に意見を聞く。そういうのは事実、ニュースとして成立します。現地の人々の生活を、私たちは知らないからです。しかし税金が上がるとか、国政が揺らいでいるとか、そういうのはまさにニュースの事実を広く国民全員に伝達するという場面なのです。それに対する反応は、まさにニュースを報道した瞬間に生み出されるものであって、聞き手が自分なりの反応を持つことが大切なのです。にもかかわらず、街の人の反応を先に出してしまうと、ニュースを見た人々はその反応に流されるか、あるいは反発するか、いくらかの影響を受けてしまうのです。
 問題点2)簡単に世論を操作してしまう。「街の人々はこういう意見です」というふうにまとめてしまうこと。番組製作者は事実や解釈を加工していきます。わたしたちはそれが誰かによって加工されているものだということを忘れてしまいます。街の人の反応は?といって東京のサラリーマンにインタビューしているが、あれは日本国民の意見を代表しているわけではありません。電話のなんとか方法で世論調査をしますが、あれは昼間に家にいて電話調査に応えるという余裕のある人だけの意見です。忙しい人々、固定電話を持たない人々、ホームレス、障害者などを完全に除去したデータです。それを世論と言ってしまうことに問題があります。メディアの人々は世の中はこうです、街の人はこんな意見です、という具合にまとめてしまいがちです。数字や図表にまとめてしまうのは危険です。正しい事実が伝達されたり、科学的で客観的な分析がなされるよりもはるかに前の段階で、世の中はこっちに向かっているから、みんなこっちへ行こう!という世論操作がなされると思います。
 問題点3)そもそも専門家の意見ではないのだから、税金が高くなると生活がきつい、というような極めて素人的な意見になるのです。シロウトが、いかにも専門家のような喋り方をするということ。それが問題です。おそらくインタビューに答えている人は、「いやあ、あまり詳しいことは分からなくて自信がないんですけど、いいですかあ」といった前置きをしているはずなのです。しかしその部分は削除してしまい、「もうちょっと国民のことを考えて欲しいですよねー」という部分だけを、電波を使って多くの家庭に伝えてしまうのです。シロウト意見が出たら次に「その意見は間違っている」という議論が起こるのが自然なのですが、その後に、発展的議論の余地はありません。シロウトは印象や思い込みで言葉を使い、自分の感性が唯一正しいものであるかのように喋ります。(私ごんたろうも、シロウトですが)それは会社や家の中であればよいのですが、そのままニュースになってしまうというのが危険です。さらに民主党の小沢元代表が裁判になった際の、庶民の意見などというのは、取り上げるべきではないのです。あれは、ただの悪口だったりするのです。
 問題点4)そもそも「街の人の意見をもっと聞きたい」という視聴者の意見があるのか?ああいう極めてシロウト的な、たんなる反応を聞いて、視聴者は嬉しいのでしょうか?たぶん、みんな、「何いってんだこいつ」とか「偉そうだな」とかそんなふうに思っているでしょう。街の意見を聞きたいと思っているのは、政治家や金持ち、庶民ではない人々が庶民の反応に興味があるのであって、庶民は、庶民の反応には興味はないのです。池上彰氏の解説は定評があります。私は寺島実郎氏の解説が好きです。庶民は、詳しい情報とそれについての科学的で専門的な解説を求めている、と私は思うのです。みなさま、いかがでしょう。
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Posted on 2012/06/09 Sat. 17:22 [edit]

category: 社会・教育

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