「ガンバの冒険」感想(1)  

 1975年に放映されたテレビアニメ「ガンバの冒険」についての感想です。この作品の素晴らしい点についていくつかにまとめてみたいと思います。
 1)主人公ネズミの視点で雄大な世界を描くこと。
 本作品の主人公はネズミたちです。一見したところ可愛らしい縫いぐるみのようなキャラクターです。ネズミ、リス、ウサギあたりは、かなりデフォルメされていて、漫画的です。表情は一見したところ「雑」に描かれているようです(実際にはそのポーズや動きなどがかなり丁寧に考えられていますが)。一方、ノロイをはじめとして猫や犬、馬や牛といった動物たちはまるで恐竜のように劇画風に描かれています。写実的、というのも少し違います。山や川、海や波、空や太陽などは独特の油絵風の技法で描かれています。ネズミから見た世界というものを描いています。圧倒的なスケールで存在する山や海を背景に、広い草原をちょこちょこと素早く動くネズミたちの姿、その対比がとても印象的で素晴らしいと思うのです。カラス岳の断崖絶壁、蒸気機関車、貨物船などは、ゴツゴツとして荒く、重く、冷たく、硬いということを表現しています。ネズミは小さくて弱い存在であり、その世界はネズミたちにとっては危険がいっぱいなのです。下から上を見上げるような視点、構図が見事です。
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 その中で特に印象的だったのは15話です。瀕死の状態のガンバが山小屋に入り、人間と出会うシーンです。ネズミから見た人間ですから、色は灰色で、ゆっくりと重々しく動くように描かれています。しかしここで登場したのは、独り寂しい生活を送っている心優しい人間でした。この山男はガンバに治療と食べ物を施します。かといってガンバと対等な会話があるわけではありません。この距離感というものはそのままで、しかしながらその距離感を乗り越えて少しだけかかわりを持つ。そんな姿がとてもいいですね。最後、ガンバがひたすら山頂目指して走っていく姿、カラス岳の山肌が明るくなっていくシーンはとても印象的です。
 19話の風景もとても良いと思います。ツブリと出会い、ツブリたちにノロイ島まで運んでもらうシーンです。その景色がいい。雄大な風景の中で大空を舞う。おそらくこの構図とか動きなんてのが細かく計算されているのだと思います。美しい夕焼けとノロイ島のゴツゴツした岩肌を見ながら、ゆっくり運ばれていく。パラシュートで降下していくネズミたちの勇敢な姿を、ノロイが遠くから見つめる。とても印象的なシーンでした。
 劇場版「ガンバとカワウソの冒険」は、1991年の作品です。テレビ版1975年からすればもう16年もたっているのです。劇場版「カワウソ」にはテレビ版の良さが失われています。キャラクターは、よく言えば表情が細かく豊かになったと言えますが、そのことでシリアスな世界が失われ、ホームドラマ的な雰囲気を出すようになりました。風景は、(まるでドラえもんのように)綺麗に丁寧に描いてしまう。ネズミの視点から見た恐ろしい世界ではなく、人間の視点から見たほのぼのした世界として描いてしまう。ショベルカーも、蒸気機関車も、全て普通に描いてしまう。森の中は、綺麗な小川、豊かな自然として描いてしまう。結局のところ冒険ではなく、遠足か散歩程度のものになってしまうのです。
 新しい映画「GAMBAガンバと仲間たち」ではなぜかCGでした。なぜCGにするのでしょうか?誰がCGを求めているのでしょうか?私たちは、それが「コンピューターで構成されたデータ」だということを知っています。それは人間が力を込めて描いたものではないのです。表現者はそこにいません。そこにあるのは現実です。ネズミでも人間でも同じように見える一つの客観的な「現実」です。表現の仕方としてはずいぶんと後退したと言えるでしょう。
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Posted on 2019/11/22 Fri. 22:29 [edit]

category: アニメ・特撮

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