『友だちのほしかった大おとこの話』『友だちのほしかったネズミの話』感想  

(作・絵:アンネゲルト・フックスフーバー、訳:たかはしようこ、偕成社、1986年)バルトロは巨人。見かけは強そうだが、気が小さい。それゆえ友達がいなくて孤独だ。勇敢なネズミがいた。見かけは弱そうだが、気が強い。それゆえ友達がいなくて孤独だ。本書は、二人の物語が中央で出会う。はたして二人は友達になれるであろうか。どんな会話になるであろうか。読者はその先を自由に想像してよい。二人は正反対のように見えるが、ギャップがあるという点では共通する。コンプレックスを抱えるという点では全ての人間に共通するであろう。友達とは何か。自分の弱さを補完し合うものか。あるいは新しい変化や可能性を切り拓くものか。


 二つの本が合わさって一つの本となっている、不思議な絵本です。『友だちのほしかった大おとこの話』 これはバルトロという巨人の話。とても体が大きいのに気が小さい。目が大きいからといってフクロウを怖がり、歯がとがっているからといってキツネを怖がり、さらにはシカのことを「つのかいじゅう」といって脅えるのです。バルトロはブルブルガタガタふるえっぱなしです。バルトロの悩みは、体が大きいことではありません。友達がいなこと、一人ぼっちということでした。手のひらにのせてなでたり、ちょっとはなしができる友達が欲しいと思うようになります。しかし森の動物たちは巨人のバルトロをとても怖がっていました。こちらの絵本はそこで終わりです。
 『友だちのほしかったネズミの話』 これは勇敢なネズミの話。とても体が小さいのに気が強い。キツネだって、ネコだって、カミナリだって怖がりません。小さな体ですから、力は弱いのですが、足が速く、知恵があります。逃げるのは得意です。ネズミの悩みは、体が小さいことではありません。友達がいないことでした。同じネズミたちは、怖いもの知らずのネズミとは友達になりたがりませんでした。ひとりぼっちの毎日は嫌だと思い、友達を探す旅に出ます。キツツキやアナグマやクロヘビなどと出会いますが、友達にはなってくれません。ある時、ほかほかのベッドが見つかり、横になっていました。こちらの絵本はここで終わりです。
 2人が中央のページで出会います。二つの絵本が中央のページで合わさります。そこでは巨人バルトロの手の中にいる小さなネズミの姿が描かれています。絵本自体はこれで終わりなのです。読者の中には「は?」と思う方もいらっしゃるでしょう。結論は何?で? どうなったの?わたしたちは、結論まで聞かなければ満足しないような体質になってしまっています。ここから先は想像しなければなりません。すかっとする作品、さっぱりする作品は、その後には何も残りません。良い作品とは、読み手の心を刺激し、数多くの意見や解釈や感想を呼び起こすことができる作品だと思います。これで終わり?ではなく、ここからは読者任せということになります。
 さてその先を、私なりに想像してみましょう。まもなく大おとこが目を覚まします。手の中にネズミがいることに気がつきます。うわっ、ネズミだ!バルトロが動いたことでネズミがびっくりして目を覚まします。ネズミが強気でくってかかるでしょう。「やい!巨人、かかってこい!」大きな体を前にして、自分は負けないぞという気持ちでぶつかっていくでしょう。一方、大おとこは?驚いて怖がるかもしれませんが、最も小さい動物です。ひょっとしたらそこまで怖がらずに会話が出来るかもしれません。よく聞こえないよう、などという反応かもしれません。ネズミはバルトロの耳元で話を始めるでしょう。
 2人は友達になれるでしょうか?一見すると全く違うタイプであるように見えます。性格も体格も全く異なります。しかし共通点があります。それは相手に与える印象と、自分の人格が違うということ、です。それゆえ友達が出来ないということ、そしてどちらも友達が欲しいと思っているということです。バルトロもネズミも、自分の体格そのもので悩んでいるわけではありません。友達がいないことを悩んでいるのです。わたしたちは、自分はこういう人間なのでこういうふうに扱ってほしいという「願い」と、実際に周囲が自分をどう思うかという「現実」との間の、ギャップに苦しむことがあります。そのズレが大きくなればなるほど苦悩もまた大きくなります。わたしたちは、自分がこういう人間であるということを認めて欲しいと願いますが、必ずしも周囲はそれを理解してくれないのです。大きな体に対しては「大きい体のくせに」等と言われますし、小さな体に対しては「小さな体のくせに」等と言われます。辛いことなのですが、外見だけで判断する人間が存在するという現実は、受け止めなければなりません。それを受け止めた上で、様々なかかわりの中でギャップを埋めていったり、あるいはそこから自分らしさを見出したりするのです。重要なことは友達関係は、そのギャップを埋めるか、ギャップを楽しいもの、素敵なものへと変容させることができるかです。この絵本はたんなる出会いの絵本ではなく、友達の可能性を模索するための絵本と言えるのではないでしょうか。
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Posted on 2011/10/25 Tue. 21:38 [edit]

category:   1) 出会い 友達の予感

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