『とき』感想  

(作:谷川俊太郎、絵:太田大八、福音館書店、1984年)前半では、恐竜時代から中世、近世と続く時代の変化を描く。後半では戦時中、戦後の復興と家族、わたしの誕生、祖母の死など生活の変化が描かれる。きのう、けさ、さっきという時間の流れを見て何を思うか。辛いことや悲しいことがあっても、時間は過ぎてゆく。多くの問題を解決してくれるのが時間だ。しかし幸せな出来事や感動的な経験も、全てを過去にしてしまう。時間は残酷だ。今を生きる全ての人に未来が与えられる。私達は歴史を背負って生まれてくるが、未来を作りかえることもできる。時間は、全ての人に平等に訪れる。生きる重みを感じる。
 おおむかしの そのまた おおむかし(恐竜時代の絵)おおむかしの もっと むかし(原始時代の人々の絵)おおむかし(農耕時代の人々の絵)むかし むかし そのむかしの そのまた むかし(平安時代の町の絵)という形で、進行します。まるで版画で作成したような絵、大勢の人々を描いています。江戸時代、明治時代と続き。おとうさんのこどものころ(空襲の絵)おとうさんとおかあさんのけっこんしき(昭和中期の結婚式の様子)わたしのうまれるまえ(建設途中のマイホーム、骨組の家)わたしがうまれた!(マイホームの庭に、赤ちゃんを抱いた父親、その横の母親、そして祖母)おととし おばあちゃんがなくなった。(夜、マイホームの部屋の電気)きのうけさ6じかんまえさっき1びょうまえいま最後のページは左側に眠っている子ども(おそらく主人公)右側には、自転車をこいでいるお月様「ねむっているあいだにも ときは すぎてゆく」「ときは けっして あともどりしない」「だれもときをとめることはできない」とあります。絵本はここで終わりです。
 テーマは「とき」です。前半のあたりでは1万年、1000年、100年単位で進んでいきますが、後半になるにつれて10年、数年、数時間という単位で進んでいます。前半は「時代」を描いているのですが、後半では「時間」を描いていきます。私だけかもしれませんが、後半で、泣きたい気持ちになるのです。辛いことがあっても、悲しいことがあっても、嬉しいことがあっても、時間はどんどん過ぎていきます。どんなにドラマティックで感動的なことがあっても、何もせずにぼーっとしているとしても、時間はどんどん、確実に、進んでいきます。全ての事柄を後ろにまわし、そして私たちは、過去のことを、忘れていくのです。
 時間は、残酷です。しかし忘れるがゆえに新しいことを始めたり、覚えたり、考えたりできるのです。いまという「とき」は、太古の昔から続いている流れの上に成立するとともに、新しい未来にも開かれているのです。言葉は、今ここで眠っている主人公の「この瞬間」を基準として選ばれています。「さっき」とか「きのう」には絵がありますが、「あした」とか「10年後」には絵がありません。未来だからです。そんなことを思い浮かべるような絵本です。この絵本の素晴らしさは、時代の流れ、時間の流れを、表現している絵にあります。「とき」そのものは見えませんが、時代や時間による私たち人間の生活は見ることができます。是非購入してこの時間を追体験してほしいと思います。
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Posted on 2012/01/18 Wed. 21:41 [edit]

category:   3) 歴史の流れ

thread: 絵本 - janre: 本・雑誌

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