『パンダ銭湯』感想  

(作:ツペラ ツペラ(tupera tupera)、絵本館、2013年)一体何が面白いのか。パンダが銭湯に入るという点以外は、極めてリアルで写実的である。ファンタジーを描くにしては不完全であり、日常風景を描くにしても不完全である。物語として笑わせるのではなく、パンダのキャラクターで笑いをとろうとしている。その意味では一発芸のようだ。パンダの白黒模様は、雪景色や竹林での保護色だという。黒部分が洋服やサングラスだという表現は、大自然の摂理を小馬鹿にしているように見える。白人が黒人の肌の色を小馬鹿にするかのようだ。そもそも外見を茶化して笑うというそのあり方は、残酷な笑いではないか。
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 本書の内容は、家族が銭湯に入る様を、とてもリアルに描いています。銭湯の空気感や質感や距離感などが丁寧に描かれているのです。唯一、それが人間ではなくパンダという点だけが違います。そしてパンダが、サングラスを外したり、黒い洋服を脱いだりします。という話なのですが、非常にこれが高評価なのです。ごんたろうは、とても評価できません。以下議論してみたいと思います。高評価の理由をまとめると。1)子どもが喜んで読んでいる。2)細かいところまで描かれていて素晴らしい。3)パンダがかわいい。4)シュールで、意外だった。発想が素晴らしい。5)笑えた。1)は読み聞かせの仕方にもよると思います。文章が少ないので、補ったり驚いてみせたりすることが必要になるでしょう。うまく、盛り上がるように読ませていると、子どもたちは笑うと思います。2)については、これは同意します。ただし、もし日常生活を描くのであれば、ちゃんとした人間の家族を、本当に昭和の雰囲気を出して、リアルに描くといいと思います。(それには、パンダが邪魔をしてしまっています。)
 3)についてです。ぱんだであれば(たれぱんだでも)何でも同じという意味でしょう。特に本書である意味はありません。4)についてですが、ごんたろうから見れば、シュールではありません。発想も素晴らしいとは思えません。例えば黒人を見て、なんとかして黒色を剥がせようとした織田信長と、同じようなことだと思います。亀の甲羅をストンと取ってしまったり、ライオンのタテガミをべりっと剥がしてみたり、そういう発想です。シュールというのであれば、銭湯に、キリンやライオンが登場したり、さらには疲れたサラリーマンが「疲れ」という物体を落としていくとか、銭湯の番台になぜか、警察がいるとか、子どもが銭湯に入ると男女が変わるとか、お湯が、ジュースだったりとか、銭湯に入っているのが、果物や野菜であるとか。奇想天外なアイデアはいくらでも出てくると思うのです。しかしここではパンダの服を脱ぐという点だけです。私たちの常識や価値観をひっくり返すようなものではなく、誰でも思いつく程度の発想だと思うのです。さて最後です。
 5)笑えたという点ですが、本書は、一体、何が面白いのでしょうか。これは言葉で表現すればこういうことでしょうか。「みんな、見て見て、あそこにパンダがいるよお」「ここから隠れて見てみよう」「あああっ、黒地は洋服だったのかあ!」「あの目、かっこいい!」パンダ自身は、覗いているこちらには気付いていません。いたって本人たちは普通に生活しているだけです。笑わせているつもりはありません。いわば隠しカメラを忍ばせ、真実を知り、それを隠れて見ている大勢の観衆がゲラゲラ笑っている、観察です。そんな場面でしょうか。ですから本書は、文章が少ないのです。笑いは、基本的には間違いや失敗などがあって、それが予想や期待とずれている時に笑いになるのですが、本書の笑いは性質が違うのです。男の子が銭湯に入りました、パンダと出会いました、話をしました、云々という物語ではありません。観衆は、パンダの外見や日常生活を覗き見て、ゲラゲラ笑うのです。パンダに対する敬意はありません。それは、残酷な笑いではないでしょうか。本来、パンダの白黒模様は、雪景色や竹林での保護色です。黒部分が洋服やサングラスだという表現は、大自然の摂理を小馬鹿にしているようにも見えます。子どもが絵本を楽しんでいる、という光景そのものを批判するわけではありません。ごんたろうが思うのは、いわばこういった性質の笑いは、成長とともに乗り越えていくような、そういう観点が大切だと思うのです。子どもがパンダを見てゲラゲラ笑うのは、いわば自然な姿です。良識ある大人は、もっと高度な? もっとファンタジー的な笑いを教えてあげるべきだと思うのです。
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Posted on 2015/08/28 Fri. 22:08 [edit]

category:   1) 不思議なことが起こる

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