『きみのかわりはどこにもいない』感想  

(作:メロディー・カールソン、絵:スティーブ・ビョークマン、訳:徳永大、いのちのことば社、2000年)100匹の羊を率いる羊飼いが、迷子になった1匹を必死で探す。探すのは当然だが、本書が言いたいのは唯一性が大切だということだろう。それは奇異だ。真に唯一性を大切にするのであれば、他の動物と交わり、自然界で自由に育てるべきではないか。飼い主は、羊毛を得るという自己利益で羊100匹を集め、そこで単調な仕事をさせている。(sheepにsはつかない)勿論、羊は羊の身分を超えてはならない。個性的な活躍が出来ない。その上で飼い主はあたかも優しい紳士のようにやってきて、一人ひとりが大切だと公言する。それは偽善ではないか。
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 100匹の羊を率いる羊飼いが、100匹揃っているかどうかを確認します。名前もあり、一匹一匹は性格が異なります。「おちゃめ」「おおりんぼう」「はずかしがりや」私たち読者には皆同じ羊に見えます。名前を呼んでいくのですが、ライラ97レオナルド98ロン99ここで飼い主は99匹しかいない!と気がつきます。その後で、それがワンダーだということに気づきます。これは、よく見ればおかしいと思います。ロン99、ワンダー、あれ? ワンダーがいない!という展開ではないのです。あれ?99匹しかいないぞと思ってから、少し考えてから、ワンダー!なのです。上記の瞬間にワンダーの存在を一瞬忘れてしまっているのです。これがワンダーではなく、シローとか、メリーとか、中盤だとすればどうでしょうか?いつ気づくのでしょうか?羊飼いは迷子の羊ワンダーを探し出します。あちこちさがし、やっと見つけました。その際に、羊飼いは、ワンダーとの特別な思い出とか、ワンダーの個性などについて思い出してもよさそうなものですが、そういう記述は見られません。羊飼いは、心配で探したこと、見つけて嬉しかったことを伝えます。とにかく大切だということを強調するのです。羊飼いは、全員揃ったところで「みんなしってる それぞれの名で」「どの子もみんな あいしているから」「どの子もみんな たいせつだから」と大きな声で呼びかけていきます。最後の頁でこの話が聖書「マタイの福音書」からの話であることが示されています。ごんたろうは、へそまがりなので。とにかく納得していません。
 一匹が大切であるのは、それが貴重な財産だからです。100分の1であっても、それはとても大切な財産になるはずです。本書は、そのことだけではなく、いっそう大きな意味を持たせています。名前で憶えていること、性格をよく知っているということ、です。すなわち、一匹一匹の独自性、個別性、唯一性を大切にしているということを言うのです。しかしそれは、とても奇異です。真に唯一性を大切にするのであれば、他の動物と交わり、自然界で自由に育てるべきではないでしょうか。飼い主は、羊毛を得るという自己利益で羊100匹を集め、そこで単調な仕事をさせているのです。草原で散歩をさせる程度のことしかさせていません。sheepにsはつきません。全体で一つの生き物のようにとらえるのです。「きみのかわりがいくらでもいる」ような、そんな環境に置いているのです。独自性、個別性、唯一性が出ないような、そういう環境に彼らをおいているのは、誰か。ほかならぬ羊飼いです。彼はそういう関係をこしらえているのです。
 この環境の中では、せいぜい性格が違うという程度のことしか、出てきません。個性的な活躍は出来ません。もし1人ひとりを大切にしたいのであれば、もっと複雑な仕事、例えばプロジェクトを立ち上げるというような、工夫が必要な仕事を与えるべきです。グループを作ってリーダーを指名するとか、あるいは一匹ずつに発表をさせるとか、作品を作らせるとか、何か独自性が出るようにするべきです。勿論、羊は羊の身分を超えてはならない、ということになっています。迷える子羊たちよ!そうやって常に上から目線で、全てを管理している立場から、言葉をかけていくのです。「ぼくはみんなをまとめるリーダー的資質があるから、今日からは僕が羊飼いをする!」なんていう個性は、絶対に認められないのです。一方でがんじがらめに縛っておき、個性を出せないような環境を作っておき、それでいて、飼い主は、あたかも優しい紳士のようにやってきて、一人ひとりが大切だと公言する。それは偽善ではないでしょうか。
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Posted on 2015/07/18 Sat. 22:43 [edit]

category:   3) 個性と役割分担

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