『はらぺこあおむし』感想  

(作・絵:エリック・カール、訳:もりひさし、偕成社、1976年)ジャンクフードはよくない、野菜を食べましょう、食べたものが貴方の身体になります、等というメッセージを受け取ることもできる。しかしいっそう強調されているのは、このカラフルな色彩であろう。この色彩感覚は、外国、とくに欧米のものである。アフリカともアジアとも違う。ラストの蝶もまた極めて派手だ。目がチカチカする。本書はカラフル=よい、地味=わるいという価値観を含む。しかし風や温度や音や質感などは捨象されている。日本人はもっと地味で落ち着いていて、しかも自然の美しさや風情を感じる存在だと思う。…「きれい」だけでよいのか?
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 おつきさまがうっすら笑っています。葉っぱの上の、小さな卵です。卵から青虫が生まれました。太陽が笑っています。青虫はおなかペコペコです。月曜日には、りんごを一つ。火曜日には、梨を二つ。水曜日には、すももを三つ。木曜日には、いちごを四つ。金曜日には、オレンジを五つ。食べました。本書には青虫が食べたと思われる穴が、あいています。土曜日には、チョコレートやアイスクリームなどを食べます。身体に悪いものばかりです。ついにおなかをこわしてしまいます。日曜日は緑の歯っぱを食べて、再び調子が戻ります。・・・太ってしまいました。さなぎになり、何日も眠り、そして、きれいな蝶になりました。とてもカラフルです。それまで食べたものの色が使われています。
 さて。名作として評価は高く、ロングセラーです。食べることや成長することについての本というふうにも言えると思います。暴飲暴食はよくありません、野菜を食べましょう、成長するにつれて食べる量も増える、食べたものがその後の身体になる、という意味も、含まれているようです。しかしながら、それにしても絵の表現が独特です。おそらく本書のテーマは、動物の成長というよりはむしろ、「色」だと思います。その背景には、カラフルであることはとても良いことであるという価値観が含まれています。青虫やさなぎといった存在は、地味で暗い。しかしカラフルな食べ物を口にし、最後にカラフルな姿になる。それを喜びや感動として表現しているように見えます。
 これは、おそらくは西洋的です。アメリカや中南米、インドなど、とてもカラフルです。私たち日本人の感覚からすれば不思議でしょうがないのです。毎日過ごしている部屋の壁が、真っピンクであるとか。よくそんな色で落ち着けるなあ、なんて思います。日本人は、車は黒とか白が多く、家の壁も、一見するととても地味です。西洋の文化の人からすれば、とても殺風景で、地味で、暗い。そんなふうに見えるかもしれません。しかし私たちはその方が落ち着くのです。そしてたまーに見せるちょっとした色の違いを見て、感動したり驚いたり、考えたりするのです。私たちが感動するのは、薔薇やチューリップというよりはむしろ、梅とか紫陽花とか、派手としてもせいぜい菊くらいでしょうか。ちなみに桜は、半分は西洋的なイメージがあります。そう考えると、本書はとてもドギツイ!最後の蝶は、もう凄まじく派手です。アマゾンのジャングルで見かけそうです。音楽を添えるとすれば、チューバとか、トランペットとか、ハンドベルとか、電子オルガンとか、ハープとか、そういう雰囲気です。冬になると、家の周辺を赤とか青とかでイルミネーションをする人がいますが、それも同じような印象です。ごんたろうは、「なんて無神経な人だろう」というふうに思います。まるで志茂田景樹のようなインパクトです。派手であればよい、明るければよいという感覚は、ちょっとついていけません。蝋燭のようなほんのりした明かりが好きです。LEDは、夜という概念を破壊しているかのようです。
 本書は、とても人気があります。きれいで美しいという評価は高いです。若い女性なんかは、とにかくピカピカして煌びやかであれば、わーっ!★ステキーなんて言いそうです。しかしながら日本文化を背負う人間としては、この絵本が描いていないような、微妙な雰囲気だったり、風や重さのような、そういう部分を大切にしたいところです。ドギツイ色が並べられることによって、微妙な色彩が分からなくなってしまうのではないか。そんなことさえ思います。
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Posted on 2014/12/28 Sun. 00:41 [edit]

category:   3) 食べること

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