『やまださんちの てんきよほう』感想  

(作:長谷川義史、絵本館、2005年)たいふう、はるさめ、にわかあめ、あられ、みぞれ等の天気予報に沿って山田家の日常風景が描かれる。予報という形態をとっているが、予報の通りになりましたという意味か。遊び心満点で作られていて読み手も楽しくなる。二人が怒られて涙を流しているシーンに雨ではなく、虹という言葉をあてている。しかも2時とかけているあたりはとてもよい。遠くを見るのは人間の優しさだと思う。人間の生活や感情はまるで天気。過ぎ去ってしまえばどうでもいいこと。そんなふうに生きていければ幸せだ。特に怒りの感情はさっさと忘れたい。明日は、必ず晴れる!
 「きょうのやまださんちは はれ」「きがつけば こうずい」(おねしょ)「あさから たいふう」(お母さんの洗濯)「おひるは はるさめ」(祖父母と母と僕の4人で春雨を食べる)「ごごいちじ にわかあめ」(お母さんがテレビドラマを見て泣く)「おじいちゃん あられ」(を食べる。)「おばあちゃん みぞれ」(を食べる。)「たいきのじょうたいが ふあんてい」(お母さんが怒りそう)「とうとう かみなり」(お母さんが怒ってしまう。)「もう5じだけど にじ」(怒られた二人が涙を流す。お母さんは料理を作っている。外には綺麗な虹。)「いろいろあったけど かすみ」(お風呂)「そしてあしたもやっぱり はれるでしょう」
 本書から多く事を発見できる。(泥棒がつかまったりする。)春雨は、食べ物だが、そういう言葉遊びが入っているあたりも良い。最も良いのは、お母さんが2人を叱り飛ばした後のシーンだ。中心的な出来事は、二人が涙を流しているということだが、文章は、外の虹。出来事を正確に表現するならば、「怒られていじけてしまった2人」ということになる。それを避け、わざわざ遠くの風景について言葉を選ぶ。人が落ち込んだり泣いたりしていることを、赤裸々に触れることは、人間としての品位に欠ける、と思う。それゆえわざわざ遠くのことについて言葉を使うのだ。
 この絵本は、人間の日常生活や感情的な変化を「天気」で表現する。そこから私たちはどのようなメッセージを受け取ることができるか? 人間の生活・感情は、天気のようなもの。そう思えば、人生はとても楽な気持ちで過ごせるだろう。天気というのは、私たちにとって重要な関心事である。しかし今日という日が過ぎてしまえば、今日の天気がどうだったということは、どうでもよいことになる。明日がどんな天気か?ということは気になるが、雨が降るといえば傘を持っていく。寒くなると言われれば厚着をしていく。その程度の関心事である。おねしょをしたとか、何を食べたかとか、怒られたとか、そういうことは、無視するほど無意味なことではないのだが、かといって深刻に引きずるほどに重要なことではない。そう思えば、人生をもっと楽に過ごすことができるかもしれない。
 さて、怒りとは何か?首尾一貫性や一つの論理を統制しようとする見方に立つと、なかなか怒りは消えない。どうしても怒りが消えない時には、怒りを忘れるということが必要だ。「ところで、明日はどうなる?」この切り替えが重要である。天気の移り変わりをイメージするとよい。「明日は晴れるでしょう」そんな言葉とともに、今日のイライラ、ムカツキを忘れよう。目の前の人が、カッとなっていたとしたら、「あ、いまは、ちょうど雷雨の時間かな」なんていって、受け止め、しばらくすると「ところで、話は変わるけどさあ」と言って別の話に移行するとよい。
 この絵本の時間の流れは、不思議な形をしている。最初のページでは、「きょうのやまださんちは はれ」とある。これは朝の時間帯、昼から夜にかけての天気「予報」のようでもあり、「実際に、やまださんちは、はれていました」という現状報告のようでもある。「きがつけば こうずい」「あさから たいふう」といった形は、若干、天気予報という形態をとりながらも、予報したことがそのまま起こっている、という話である。現状報告が多いのだ。この本が伝えようとしていることは何か?おそらくは、今後の生活や事件というのは、なんとなく予測できることであるし、似たようなことがらが繰り返されているのだ、というような意味である。勿論、それをネガティブなイメージで語っているわけではない。朝は全てがリセットされ、一日の間で様々な変化があり、辛いこともあり、しかしながら最後はハッピーエンドで、おそらく、明日も晴れるであろう、という未来への希望。安心。そういうことを描いているのだと思う。「そしてあしたもやっぱり はれるでしょう」この言葉は、深くて重い。人生に対する底抜けの明るさ。徹底した幸福感。この絵本から、そうしたものを受け取ることができる。
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Posted on 2013/04/17 Wed. 23:08 [edit]

category:   7) 家族という空間

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