『銀河漂流バイファム』感想  


1.
 1983年10月~1984年9月まで、一年間にわたり放映されてきたテレビアニメです。テレビアニメが技術的に向上し、あらゆる世界観を描けるようになった頃、エロ、性欲を瞬間的に満たすというような「萌え」「キザ」がまだ興隆する前。その頃の、素晴らしい時代の作品の一つです。地球人は、イプザーロン太陽系の新しい星(クレアド星、ベルウィック星)を見つけそこに入植していました。そこにアストロゲーター(ククト星人)が侵略を開始、戦争になりました。後で分かることなのですが、もともとはククト人たちの星でしたが、住めなくなってしまったので、いったんは小惑星コロニーに避難し、住めるころになったと思った矢先、地球人が入植した、ということなのです。そのあたりの背景は複雑なので飛ばしますが、地球人と異星人(ククトニアン)との戦いという世界観で話が始まります。異星人たちの襲撃によってクレアド星から脱出した少年少女たち。次から次へと敵の襲撃を受け、大人たちは次から次へと命を失い、ベルウィック星へと避難し、アゾレック基地に落ち着く頃には、子どもたちが13人、大人は、ケイトさん一人というメンバーになっていました。ケイトさんは26歳、ほかは10歳前後の子どもたちです。残されたロボット(ラウンドバーニアン)を使い、異星人たちとの戦いに立ち向かい、自分たちの両親を探し求める旅に出るのです。そんなストーリーのアニメです。

2.
 主人公ロディ・シャッフル(14歳)が、主人公ロボット(バイファム)に搭乗するのは12話、バイファムにて敵ロボットと戦うのは13話のことです。それまで長い時間をかけて、人間関係や設定を描いていきます。このあたりのじっくり本腰を入れて描くあたりが素晴らしいと思います。「機動戦士ガンダム」で、アムロは1話からガンダムを自由に操縦し、ザクと戦います。それを否定するわけではありませんが、小さな少年が、ハイテク機器を使いこなすというのは、どうも現実的ではありません。バイファムの12話の間で、なぜ子どもたちだけで旅をしなければならなかったか、なぜ子どもたちがハイテク機器を使いこなせるようになったか、が説得力を持って描いていくのです。世界観がしっかりしてくるのです。それまで、ロボットアニメは、30分の間に、必ず敵ロボットとの戦いがありました。しかし「バイファム」では、敵から逃げまくるだけ(8話)や鉄骨除去(12話)といった地味なシーンで終わることもあったのです。当時のごんたろうは、それを「ヒーローが出なくてがっくり」等とは思っていませんでした。自分がこの大きな世界観の中にじっくり入っていくような心境でした。練習艦ジェイナスに14人が搭乗し、地球へ向けて出発するあたりでは、自分も一緒にジェイナスに搭乗しているような気分でした。ごんたろうは当時小学生でしたので、フレッドシャッフル(10歳)あたりに自分を重ね合わせながら見ることができました。男の子には、強い存在、カッコイイ存在になりたいと思う傾向があります。自分も巨大ロボットに搭乗して、巨大な敵と戦い、最高の栄誉をもらいたい、そんなふうに思っていました。
 このアニメの一つのテーマは「成長」です。練習艦ジェイナスには4歳の幼児もいますし、ロディ(14歳)、バーツ(14歳)、スコット(16歳)といったお兄ちゃん的存在、ケンツ(9歳)やシャロン(11歳)のハチャメチャな存在、様々な子どもたちが一緒に行動しています。特に印象的なのは、リーダー役を引き受けたスコットの苦悩(20話)お母さん役を引き受けてしまったクレアの苦悩(19話)でした。ジェイナスという宇宙船の中では、14人が一つの共同体を形成しているようなものです。小さい子どもになればなるほど、自然体でもいいでしょうが、大きくなるにつれて、下の子たちの面倒をみるという責任感も出てきます。責任感といっても、そんなに深刻でなくてもいいのです。普通に振る舞っているだけで、お兄ちゃんはお兄ちゃんらしくなるものです。アニメでありながら、「個性あふれる子どもたちのやりとりをどのようにしてまとめていくか」そんなテーマが見出せるようでした。ロディもスコットも、ほかの子どもたちの前では大人でしたが、本物の大人の前ではやはり「子ども」です。クレーク博士、ケイトさん、ローデン大佐やバンガード艦長といった地球軍の軍人ジェダ、ミューラア、彼らとのやりとりはとても素敵でした。アニメながら、「こんなかっこいい大人になりたい」と真剣に思いました。ロディとミューラアとのやりとりは、どことなくアムロとランバラルとのやりとりに共通するものがあります。この作品には、子どもの成長、多様な子どもたちをどのようにまとめていくか、大人になるということ、それらのテーマがぎっしり詰まっていました。ごんたろうが、現在、教育に関心を持ち、教師となり、日々格闘していることの原点は、やはりこの作品「バイファム」にあります。
3.
 もう一つのテーマは、いわゆる「人種問題」でしょうか。13人の子どもたちの中に、一人異星人の子が入っていました。カチュア(10歳)です。最初はそうとは知らずにみんなと一緒に行動していたのですが、ひょんなことから異星人(ククト人)だということが分かるのです。この狭い宇宙船の中にククト人がいる!地球人とククト人とが戦争をしているのに、です。子どもたちの心境を想像すると、さぞかし大変だっただろうなあと思います。ゴシップネタのように騒ぎまくるシャロン、ジミーとケンツのケンカなど。(アニメですが)子ども同士のやりとりがとてもリアルです。今このシーンを見ると、「誰か大人が入って! 話し合わせて指導しなければ!!!」なんて思ってしまいます。(アニメなのでそれは出来ませんが)現在でも、日本人だらけの教室に一人外国人がいるという状況は少なくありません。いじめられるか、逆にちやほやされるか、どちらかです。子どもたちは複雑な思いで生活することになります。勿論、気にしなければどうということはない、のです。しかし一度気になってしまえば、それを忘れることは難しいのです。(昨日までカチュアと呼んでいたのに、いきなりククトニアンと呼ぶのです)その問題にどう取り組めばよいか。唯一の大人であるケイトは遂にお酒に頼ってしまいます。敵との戦いの中、ケイトのファイターが被弾します。ケイトは、燃えるパペットファイターからこんな言葉を残します。
 「いいこと、みんな助け合って行くのよ! いままでだってそうしてきたでしょ。 異星人だから敵、そんな考えかたは私たち大人だけでいいの、真似しちゃダメ カチュア!今まで通りうまくやっていくのよ。 みんなは仲間なのよ! 失敗を恐れないで。自分たちが正しいと思ったことを、迷わないで精いっぱい頑張るのよ。 きっと逢えるわよ、ご両親に。 楽しかったわ。みんなと知り合えて。 ありがとう。みんな。」
 ケイトさんが死んだ時、私は、小学生ながら涙を流しておりました。ケイトさんが死んで可哀そう等という単純な感情ではありません。カチュアが異星人だったということが分かり、子どもたちの人間関係が非常に壊れやすくなってしまっています。そんな時に、最も必要とされる大人が、いなくなってしまうのです。ケイトさんはとても辛いだろうなあと思います。今、大人になった状態でこのシーンを見るといっそうじーんときます。上記の言葉には、ケイトの必死の思いが伝わります。今見ても号泣してしまいます!(実は生きていました的な後日談は、個人的には不要です)「バイファム」の世界はとても豊かでした。重いテーマのみならず、エロ本騒動や、女の子同士のケンカなどもしっかり描かれています。作品の前半から中盤にかけて、敵は、ロボットとして登場するのみで、異星人の素顔については、殆ど描かれていません。そこに乗っている人がどういう人か、分からないまま物語が進みます。ウグやルザルガといった敵ロボが迫ってくると、誰が乗っているか、どんな心境なのかも分からないので、とても不気味でした。子どもの視点から戦争を描くと、こういうふうになるのかな、なんて思います。
 戦争とは、相手のことを思いやるなんてことは出来なくなってしまいます。とにかく化け物と戦っているような心境なのです。しかし蓋をあけてそこに血の通った人間がいると分かると、とても銃を向けることなどできなくなってしまいます。後半では、連れ去られた両親たちを探し求め、ククト星へ向かうというストーリー展開になります。混血児ミューラア、ククト人リベラリストのジェダを中心として物語が進みます。異星人と地球人が分かりあえるかどうかという点は、戦争そのものを終結させることのできる最大のテーマでもあります。4人のククトの孤児たちとの出会い(35話~38話)最初は敵だと思い、お互い緊張感で接するのですが、しだいに打ちとけ合う姿は素晴らしいです。地球人とククト人が戦争をしている。大人であれば、相互理解には時間がかかるかもしれません。しかし子ども同士ならば、言葉が通じ合わなくても、うちとけあうことは可能なのです。アニメなので美化されていると言うことも出来るでしょう。そんなに簡単に壁を越えることは出来ないかもしれません。しかし壁を乗り越えることが「出来る」と信じるような、そういうシーンは大切です。(日本人と中国人だって、必ず壁を乗り越えることが出来ます)
 混血児ミューラアは、ガンダムでいえばシャアに相当する位置です。しばしばロディと一線をまじえます。ミューラアはロディを「地球軍のエースパイロット」と呼びました。彼は地球人とククト人との混血でありながら、自分はククト人として誇りを持っていきていきます。地球人の血が混じっていることが許せないと思っています。ミューラアがロディに詰め寄るシーンです。(41話)ミューラア「命をかけてまでも守る価値があるのか!異星人の子を」ロディ「あなただって、半分は地球人の血が流れているんだ、そんな。うっ」(ミューラア足で蹴る)カチュア「ロディ!」ミューラア「子どもの貴様に何が分かる!おれがどんな思いで生きてきたか!」ロディ「殴りたいなら殴って下さい!そのかわり僕は何度でも同じことを言ってやる!    あなたの体には僕と同じ地球人の…」カチュア「やめて!ロディ!」それを制止したのは、カチュアでした。カチュアの言葉は、とっさに出たのでしょう。ミューラアが、はっとします。ミューラア「俺はククトニアンだ、誇りをもったククトニアンの軍人だ」三人の立場が見事に表現されたシーンです。「誇り」って何でしょうか?自分の心の中を「ダメな部分」と「カッコイイ部分」とに区別し、前者を駆逐し、後者を立てる、そんな心境です。例えば中学高校と必死に勉強してきた人は、なまけたい、遊びたいと思った自分を否定し、優秀な成績をおさめたという自分を肯定します。ですから、勉強しない人を馬鹿にします。
4.
 一気に緊張感が高まる最終段階で、誕生日会(45話)が描かれています。ガンダムが最後の激しい決戦へと進むのとは対照的でもあります。ミューラアとロディの会話で、ククトが地球を侵略する意思がなかったという事実ミューラアがククト軍から見放され、ミューラア自身も闘う意味がなくなったということ。そしてミューラアの死。(実は生きていました的な後日談は、個人的には不要です)ククトの反乱分子であるジェダと地球軍とが協定を結ぶことが出来れば、戦争は終結に向かうでしょう。最終回までに、戦争の意味そのものが失われてしまうのです。ガンダムで、戦争に勝敗がつくのとは対照的です。最終回では、次のことが同時に到来します。 ①子どもたちと両親との再会(直接的な再会ではありません) ②ジミーとカチュアの、他の子たちとの別れ。それはすなわち ①この物語が両親を探し求める旅であったということ ②この物語が13人というまとまりの旅であったということを指しています。二人と離れるということが、13人のまとまりがここで終わるということを示しているのです。別れたくないという強い意志になって出てくるのです。学校でもそうです。それまではこのメンバーでいることには深い意味は感じていないのですが、卒業する頃になって初めてこのメンバーでいることの重みが分かります。(そんな素敵な卒業式があればいいですね)最終回まできて、13人ということの意味がずっしり来るのです。それまでのよくあるロボットアニメの最終回(最も強いラスボスとの壮絶な戦い)とは全く異なっているにもかかわらず、それまでの全てのストーリーを感動的にまとめあげる素晴らしい内容となっています。
5.
 基本的にはシリアスな世界観です。一見するとコミカルなやりとりも含まれていますが、それが世界観の内側にとどまっているため、すぐにシリアスな話に戻ることが出来ます。その後のOVA等の世界は、個人的には受け入れられません。ミューラアもケイトも死んでないということになったり、13人みんなで昔の映像を見たり、ロディやバーツたちがジェイナスの女の子の寝顔を見て欲情したり、ジェイナス内だけのコミカルなやりとりが永遠と続いたり。そのあたりは、ごんたろうのイメージを壊してしまいます。完成されているバイファムが、その後の蛇足によってどんどん傷ついていっているような、そんな印象を受けます。このあたりは他の人と意見が違うかもしれません。いずれにしても「銀河漂流バイファム」は、アニメ作品としても、教育や政治の問題を提起するという意味でも、とても素晴らしい作品となっています。この作品の詳細については、素晴らしい解説と分析がありますので、そちらをご参考下さい。
銀河漂流バイファム・ジェネレーションズhttp://www.v-gene.com/
バイファムコンプレックスhttp://www.vifamcomplex.com/index.html
DVDについては以下。
EMOTION the Best 銀河漂流バイファム DVD-BOX1
EMOTION the Best 銀河漂流バイファム DVD-BOX2<最終巻>
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Posted on 2013/02/11 Mon. 13:49 [edit]

category: アニメ・特撮

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