『ぼくらの七日間戦争』感想  

 中学1年生の子どもたちが集団エスケープ。学校から少し離れた倉庫に入り込み、そこで生活を始めます。子どもたちの主張は、大人たちや学校があまりにも理不尽だからでした。学校が校則によって管理強化に向かっていたのは、当時の全国的な傾向でした。暴力的な教師による体罰が問題視されていました。わたしは、この映画を中学・高校の頃に見ました。殆ど主人公たちの気持ちに共感しながら見ました。子どもの立場からこの映画を見ると、爽快感でいっぱいです。決められたことを破る、その爽快感は子どもの特権なのかもしれません。子どもの側の夢がここで叶っているのです。


 大人たちはなぜ分かってくれないのか?なぜ一方的にこうだと決めつけるのか?ぼくたちにも考えがある!やりたいことがある!子どもの側から見れば、大人たちの間違いは山のようにありますし、それらは多くの場合、当たっているのです。子どもたちにとっては、「まずもって否定される」それはとても辛いことです。いっそう許せないのは、大人たちが「君たちのために」といいながらも、実際には「自分のため」であるという偽善です。厳しい校則が許せないというよりは、嘘が許せないのです。この映画では、中学生らしさ(ムダに元気なところ)が、よく出ています。子どもたち一人ひとりの個性も、出ています。また男女の違いも、よく出ています。背伸びしたい気持ちも、カッコつけたい気持ちも、全開です。ここで描かれる全てのシーンが「わかるわかる」という気持ちにさせてくれます。男の子はあんなふうにかっこつけたくなるものです。女の子はあんなふうに後ろから追いかけていきたくなるものです。
 ただしこの映画では、個性も、男女の違いも、過度に誇張されていますので、「一方的過ぎる」とか「偏見ではないか」と思う人もいるでしょうし、たんなるドタバタコメディだととらえる人もいるでしょう。映画の中で子どもたちは様々な課題に直面します。実際に子どもたちだけで解放区を作るまではよかったのですが、内部分裂やケンカもあります。リーダー菊池はみんなをまとめようとしますが、一匹狼の安永はそれが許せません。映画ですからその辺は、うまく解決していけるのですが、もしこれが現実だとすれば、子どもたちだけですとうまく行かないことも多いのではないかと思います。
 さて。私は、リアルタイムで見た時には高校生でしたから主人公と同じ目線でドキドキしながら見ました。しかし最近この映画を見た時には、(私は一応、教育者なので)教員の立場、親の立場で見ました。全く違った色彩で見えてきて驚きました。
 あくまでこの映画は子どもの目線で作られています。それゆえ大人たちの姿があまりにも一方的で、ややコミカルに誇張されています。しかしこの映画の中で、本当は、校長も、教頭も、体育の先生も、担任の先生も、みんな心の奥底では、子どもの気持ちを分かっているのではないか。子どもたちからこのように見えるというだけのことであって、本当は、悩み、動揺しながら、どうすれば子どもたちとうまくかかわっていけるかを考えているはずです。体育の先生が本気で安永にぶつかっていくのも、本気だからです。勿論、子どもたちの将来を考えているのです。学校生活に安定と秩序を形成し、学習習慣を確立し、明るく気持ち良い学校を作りたいはずです。勿論、大人の汚い面もあるかもしれません。窮地に立たされると自分の保身を優先するということもあるかもしれません。しかしそれだけではないはずです。私はその大人の教育熱や教育愛の部分を、勝手に補いながら映画を見たのです。映画は、大人の中の「子どもを大切に思う心境」を、隠している。また、そうであってほしいと願います。悲しいのは、子どもたちが大人たちを信用していないことです。これは見ていてとても悲しくなります。子どもたちが反抗したり、ぶつかってくる分にはまだいい。しかし子どもたちが大人たちから背中を向けて、どこか遠くへ行ってしまう。そこでしか本当の楽しさや幸せが無いと思っているのが、悲しい。大人としてはつらい。大人や教師たちはこんなふうに思うでしょう。「もっと子どもたちにドキドキする経験をさせてやればよかった。」「おもいきって好きなことをさせればよかった。」そのような十分な環境や時間を与えてあげられなかったことを後悔します。子どもたちが楽しく騒ぎながら、笑っている姿をみればみるほど、申し訳ない気持ちと、悲しい気持ちでいっぱいになります。この映画の中で、子どもたちにとっての敵は大人や社会ということになっていますが、本来、本当の敵は、大自然であったり、自分自身であったりするべきなのです。それが、本来は尊敬すべき教師であるというのは、本当に悲しい話です。
 私が最もドキッとするシーン、最も怖いシーンがあります。それは大地康夫が演じる教務主任が、「ここから出してくれないか?」「先生もね、もう、君たちを教えるつもりはないから」というようなことを言います。教師が、教師という殻を捨てて生身の人間になる瞬間です。本気で怒るのをやめる瞬間です。怖いシーンです。ラストのシーンで大きな花火が上がります。全てのことがらが「まあ、いっか」というふうに、流されて、綺麗な思い出だけが残っていくようなそんな瞬間に思われます。強面の体育教師が、疲れた表情で花火を見上げています。セリフはありません。わたしには、彼が、「お前たち、なかなかやるじゃないか」と褒めているように見えます。小説版は、もっと地味でリアルです。花火は小さいですし、戦車も警官隊も出てきません。
 映画版は、リアリティよりもファンタジーを重視しているように思われます。それを批判する人もいるようですが、私はもっと素直にこの世界に入れました。おそらく子どもにとっては、法律にしたがうだけの大人、それがイコール警官隊であり、自分たちの暴力性や可能性、それがここでは戦車であり、人々に感動を与えるものが巨大な花火だった、というふうに解釈しましょう。子どもの心境をとてもよく表現できている、素晴らしい映画です。音楽も、子どもたちの演技もとても良かったです。何度見ても、泣けてくる、人生が凝縮している映画だと思います。
(1988年公開、東宝。)
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Posted on 2011/11/02 Wed. 20:43 [edit]

category: 映画

thread: ★おすすめ映画★ - janre: 映画

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コメント

No title

貴方の言ってることはとてもよくわかります

URL | ハゲ #RObuwj5.
2015/07/28 16:57 | edit

ごんたろうです。

ありがとうございました。

URL | いもむしごんたろう #-
2015/08/12 00:55 | edit

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