『トゥルーマン・ショー』感想  


 トゥルーマン(ジム・キャリー)は、誠実で平凡な、保険会社のサラリーマンです。一見すると幸せな家庭に生まれ、育ち、何不自由なく生活しています。純粋で人を疑うことがなく、真面目で、底抜けに明るい。そんな男です。そんなある日、ラジオを聞きながら会社に向かう途中、あたかも自分の動きを監視しているかのような人々の声が聞こえてきました。何ものかが私を監視している!死んだと思われていた父親が浮浪者となって目の前に現れる。トゥルーマンの周囲で何か、変なことが起こり始めるのです。友人のマーロンや妻メリルに相談し始めます。しかし誰もまともに相手にしてくれません。「そんなことあるわけない」と斥けられます。いつもの風景、いつもの会話、いつもの道、いつものコース、それを、変えてみよう!いったん止まって!誰も想像できないようなことをやってみよう!!すると周囲の全ての人々が、トゥルーマンの行動を制止しようとします。車で隣の町へ出ようとしても、何者かに阻まれてしまいます。





 父も母も、妻メリルも、友人マーロンも、会社の人々も、お客も、全て、「トゥルーマンの人生をテレビ番組にするための配役」だったのです。トゥルーマンの人生を、巨大スタジオの外で放送していたのです。巨大ドームの外側には、ゴミゴミした都市が広がっています。トゥルーマンだけが真実を知りません。様々な状況からトゥルーマンは住み慣れた故郷を離れる決意をします。何不自由のない世界は、彼にとって最も不自由だったのです。もはや誰も信用できなくなったのでしょう。一人で船を操縦し、海を渡ろうとします。一目ぼれした女性・シルヴィアを求めて。トゥルーマン・ショーを作っていたクリストフ監督は、嵐や突風を浴びせることでトゥルーマンを理想郷の中に戻そうとします。トゥルーマンは自らの身体をロープで船に括り付け、嵐をのりこえようとします。すさまじい暴風雨を、トゥルーマンは耐えます。
 クリストフ監督は、なぜこのような仕打ちをしたのでしょうか?あのドームの中の巨大スタジオは、全てクリストフ監督自身の頭の中に描いた理想郷です。あの世界では犯罪も戦争もありません。美しい世界です。一方その外の現実世界は、暴力と疑心で満たされた汚い社会、冷たい世界です。クリストフは、ドームの中の世界を理想化していました。(だからこそ彼は最後、トゥルーマンに向かって「君こそ、真実だ」と言ったのです。)もう一つクリストフがトゥルーマンを理想郷にとどめようとした理由は、「親心」だと思います。クリストフは、トゥルーマンが病気や失敗に直面するたびに「がんばれ」と心の中で励まし、成功を喜び、長い人生を常に見守ってきました。トゥルーマンの人生の全てを知りつくしたつもりなのでしょう。彼は、トゥルーマンの親になったつもりになっていました。クリストフは、トゥルーマンが夜中に海に出た時、トゥルーマンの行為を「自分への抵抗」だと受け取ったのでしょう。しかしながら子どもは、クリストフ監督の敷いたレールの上をゆっくり歩くほど簡単に成長しません。親は愛情から手を差し伸べますが、子どもはその手を振り払って先へ進みます。
 トゥルーマンは、恐る恐る手を伸ばし、ドームの内側の壁に到達します。それは、自分の人生がスタジオのセットの中だったことにはっきり気付いた瞬間でした。「全てが作り物だった」と分かった瞬間でした。トゥルーマンは、住み慣れた世界を捨てて、真実の扉を開こうとします。巨大スタジオの中の社会は、あまりにも平和で、あまりにも綺麗すぎて、違和感を覚えます。人間臭さを感じません。無理して幸せを演出しているように見えます。外の世界の住人はこのような美しい世界に憧れるかもしれませんが、はたしてこのような毒も臭みもないような社会が理想的な社会なのでしょうか。この映画は、わたしたち人間が理想郷を追い求めることそのものに批判を向けているのかもしれません。この映画は、一般的にはマスコミ批判の映画だと言われています。トゥルーマン・ショーを見ている人々は、リアルタイムで何かが起こるのではないかと楽しみに見ています。みなさんも、テレビでリアルタイムの事件を生中継していると、何かが起こるかもしれないというだけでテレビに釘付けになるでしょう。事件や心境の変化に、共感したり感動したりします。しかし最後にトゥルーマンがドームを抜け出した後は、さっきまでの感動は忘れ、チャンネルを変える。冷たい視聴者の姿を批判的に描いているのです。(1998年公開。アメリカ。)
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Posted on 2011/10/28 Fri. 23:47 [edit]

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