『海は広いね、おじいちゃん』感想  

(作・絵:五味太郎、絵本館、1979年)子どもがあれこれ語りかけていても、おじいちゃんは半分くらいしか聞いていない。この距離感はとても大切だ。年齢が違うのだから対等な会話になるはずがない。孫が「船だよ」「だれか来るよ」等といってもおじいちゃんは生返事。読者は分かる。そこにはピンク色の不思議な宇宙人が!一向におじいちゃんは気付かない。宇宙人は象や馬に変身して子どもと遊んでいる。真に高度な文明を持つ種族ならば、地球に来てやることは、おそらく侵略ではなく遊びであろう。クッキーをもらってからはそれまでの世界が一変してしまう。こんなクッキー、私も欲しい。
 ある夏の、青空と白い雲が美しい海岸の話です。子どもが言います「広いねえ、おじいちゃん」おじいちゃんは、パラソルの下で本を読んでいます。「海だもの、そりゃ 広いさ」このような会話が続きます。子「船だよおじいちゃん」祖父「海だもの、そりゃ 船ぐらいいるさ」子「誰か、泳いでくるよ」祖父「海だもの、泳ぐさ」この会話だけを見れば普通のことなのですが、絵を見てビックリ、UFOと宇宙人がやってきたのです。おじいちゃんは本を読んでいるので気付きません。宇宙人は象に変身!子「ねえ、象さんだよ!おじいちゃん」祖父「まさか、アフリカじゃあるまいし」宇宙人は馬に変身!子「お馬だよ、おじいちゃん!」祖父「まさか、原っぱじゃあるまいし」こんな状態で話が続くのです。おじいちゃんは、宇宙人が女性に変身した時に、やっとこちらを見ます。女性から青いクッキーをもらいます。おや!良く見るとおじいちゃんは「うちゅうじんのけんきゅう」という本を読んでいたのです!宇宙人はUFOに乗って去り、子どもは手をふっています。おじいちゃんは「ぼちぼち帰るとするか」といい、パラソルを直そうとします。ところが!パラソルをUFOのようにして、これに乗って帰ろうというのです。驚いたのは子どもの方でした。
 この絵本は、おじいちゃんと子どものちょうどよい距離感を描いています。おじいちゃんは子どものことをまるで無視し、放置しているわけではありません。耳は常に子どもの方に向けており、読書も、そこそこ半分で読んでいるような状態です。大人が何かに目を向けて何かをしている、そのような状況は、子どもにとっては大切な空間です。大人の周辺にいて、もし何かあれば大人が手を貸してくれるような空間、それは子どもにとっては自分の自由な空間になると思います。大人が一緒に遊んであげる、というのは、勿論楽しい時もあるかもしれないのですが、殆どは、両者が無理をすることになるのです。大人にとっても、子どもにとっても辛い。同じ空間を形成しつつも、目線はずらす。それがとても大切なことなのです。大人は子どもにまっすぐに向かい合って対話をすればよい?私はそう思いません。大人が何か別の物に目を向け、そちらに一生懸命になっている時、その後ろの空いたスペースで子どもは何かを発見します。懸命に話し相手になり、懸命に一緒に遊べば遊ぶほどに、何かが、どこかが、狂い始める、そんな気がします。
 宇宙人の色は、とても不思議なピンクを使っています。自然界ではなかなか出てこないような色です。もし本当に高度な文明の宇宙人がやってくるとすれば、おそらく最初に「略奪」ではなく、「遊ぶ」ということを選ぶのだと思います。(笑いや遊びは、人間に与えられた最高のメンタリティです。)青色のクッキーとは何だったのでしょうか?通常のパラソルがUFOに変形するということのための何らかの装置でしょうか?おそらくはそうではなく、おじいちゃんの硬い意識を、ほんの少しだけ柔らかくし、思い込みというメガネをはずす程度のことをしたのだと思います。「これに乗って帰るんだ」という箇所は、おじいちゃんが冗談を言って笑っている現実世界、その後、ふわふわ飛んでいくあたりは、子どもの空想世界ではないかと思います。この絵本の素晴らしさは、横長いスペースをうまく利用し、左のページで子どもの言動、右ページでおじいちゃんの言動が、会話をしているように描かれているという点です。是非、大人は右、子どもを左に並べて読んでみましょう。こういう豊かな世界を、子どもと共有し欲しいと思います。
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Posted on 2012/08/21 Tue. 22:53 [edit]

category:   1) 不思議なことが起こる

thread: 絵本 - janre: 本・雑誌

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