NHK大河ドラマ『翔ぶが如く』感想  




とにかく面白かったのです。

最高傑作です。

最近の大河ドラマは、もう全然ダメなのです。

1.テーマ設定とキャスト基本的には、大久保利通(鹿賀丈史)と西郷隆盛(西田敏行)という二人の関係を軸として話が進みます。これがよい。大河ドラマは、一人の人生を幼少期から死んでいくまでを描くということが一般的なのですが、後半になればなるほど退屈極まりない。武田信玄も、春日局も、後半になればなるほど、クライマックスから離れていくようでした。薩摩藩の下級武士である彼らは、大きな夢を持ち、活気に満ちた若者たちでした。冗談を言ったり、遊んだりするような楽しい仲間という地点から物語はスタートします。二人はとても仲良かったのです。それが幕末の激動の中、気が付けば、明治維新。同じ薩摩藩出身でありながら、一方は明治政府、一方は反乱軍という形で対立するのですから、すごい話です。こうした歴史的な事実をドラマ化するのですから、どんなに手抜きで作ったとしても、感動的で起伏に富んだ物語になるはずです。このドラマは、それをさらに素晴らしい作品として仕上げているように思えました。最近のドラマは、テーマだけで話題になるように、ひねったテーマを選ぶ傾向があります。徳川家康ではなく、江、源頼朝ではなく、平清盛、そのような主人公で11月12月がぐっと面白くなるとは思えないのです。保元平治の乱がクライマックスになるのに、これから、どうやって盛り上げるのでしょう?リアリティのある配役でした。写真や肖像画を最優先しています。本当にあんな感じだったのではないかと思います。有名なアイドルを出すというのではなく、実力ある若手の役者を多く出しているように思えます。

2.歴史を描くこと。視聴者は、歴史の変遷や結末を知っています。歴史をなぞるだけであれば、決して面白くなかったはずです。このドラマが感動的なのは、人々が、懸命に生きているということが分かるからです。大きな社会的制度的な変遷の間で、その流れの先を行く者、流を作るもの、それに巻き込まれていくもの、置いて行かれる者、先が見えて手を打つことができる者、先を見誤り命を落としてしまう者それらが全て、大きな音を立てて流れていくようでした。とにかくかーっとなって暴れてしまう有村俊斎(佐野史郎)蜂起を急いでしまい、同じ薩摩藩士にとどまるように説得される有馬新七(内藤剛志)若者の心境もよく分かるのです。一歩ひいて冷静に世の中を見つめることができるのは大山綱良(蟹江敬三)いろんな立場や人生があるので、なかなかうまくまとまらないのです。坂本竜馬(佐藤浩市)や岩倉具視(小林稔侍)らの倒幕を進めるあたりの戦略的な動きがとてもよい。彼らは既に幕府に任せていれば欧米列強によって侵略されると予測します。特に岩倉具視の暗躍しながら、表向きはふにゃふにゃしながら、時には鋭い眼差しで睨みつけながら、歴史をひっぱっていく姿は、印象的です。徳川慶喜(三田村邦彦) の大政奉還のあたりは、まるで頭脳戦のようでカッコいい。江戸火消の新門辰五郎(三木のり平)あたりの庶民がきちんと描かれているのもいい。 山内容堂や島津久光(高橋英樹)は、古い感覚を持ちながら、いわば時代の流れを読み取れない者という描き方をしています。愚かな判断、見通しを誤った者というのをたんなる愚か者として描くのではなく、それはそれで力強く信念を貫き通して生きているように描くのです。「彼の心境も分からないではない」と視聴者に思わせるように描くのです。島津久光は、ほどよいズレ加減で、ちんぷんかんぷんなことをするのですが、少なくとも世界のことよりも薩摩藩のことを愛しているということは十分に伝わります。彼があれだけとんちんかんだったからこそ、部下たちが上司をうまく操り、活発に奔走できた、というふうに見えてきます。明治維新後の政治内部のごたごたも、非常によく描かれています。欧米視察組と、日本に残る組との葛藤は、よく分かります。板垣退助(斉藤洋介)や江藤新平(隆大介)のような、薩長から距離を置かれていく土肥の人々の心境や葛藤もよく描かれています。西郷と大久保は、ドラマの前半では、多くのことを熱く語っていましたが、後半になるにつれて無口になっていきます。「いろんなことを思っているにもかかわらず、寡黙にならざるをえないんだな」と思わせるようなそういう雰囲気がありました。佐賀の乱と西南戦争は、ドラマのクライマックスです。人々は事実よりも印象や噂で動いてしまう、不満を持った人々は、陰謀論を持つようになる、自分の辛い気持ちを外に向けて処理しようとする、そして戦争になり、多くの人々が死んでいく。そんな教訓は、このドラマから十分に得られます。村岡新八(益岡徹)や桐野利秋(杉本哲太)たちの最後の戦いは壮絶です。城山に集まる若者たちは、異様なまでに明るく、まるで子どものようです。全ての人物が自分の信念で真剣に生きているのです。その結果、多くの若者が死んでいくのです。武士として生まれ武士として生きようとしてきたにもかかわらず、維新で一変してしまい、最後には大砲や機関銃で殺されてしまうのです。政府の側の人間も、誰一人として喜んでいません。古い時代の古い価値観に縛られ、自分を慕ってくれる若者たちに囲まれて死んでいく西郷、使命感を持って新しい時代を切り開き、全てに対して疑心暗鬼になりながら暗殺者の前に倒れる大久保、その対照的な姿を、余計なBGMやお涙シーンを殆ど排除して淡々と描いていく。とてもいいです。西郷隆盛の妻いと(田中裕子)は、最初に登場した時には本当におてんば娘として描かれていました。それが後半になるにつれて力強い母、それでいて深みがあって愛があるという立派な女性として描かれていました。最後の最後に芦名千絵(有森也実)が出産するというシーンがあります。いとは「急いで生まれてきて急いで死んだら意味がない」というようなことを言います。さらりとしたシーンでしたが、素晴らしいシーンです。ドラマの99%は戦って死んでいく男たち、使命のために命を落としてもいいと思う男たちを描いているので、最後の最後のこのシーンでは、生命の誕生と女性を描いているのです。だからといって「戦争反対」とか「男女平等」みたいな主義主張があるわけではないのです。いろんなものを描くこと。それによって深まりが出てくるのです。汚いものをずっと見た後に美しい花を見ると感動するのと同じです。激しいものを描くためには、その直前の静寂を描かなければならないのです。薩摩の方言を出来るだけ再現しようとしたあたりも素晴らしい。本当にうまくいっていたのは最初の田舎武士の頃だけです。明治維新を成功させて、歴史の表舞台に出れば出るほどうまくいかなくなります。それでも、何度も努力し、それが全てうまくいかない、まさに歴史とはそういうものだと思わせるだけの十分な説得力がありました。3.最近の大河ドラマこんなに面白いドラマを作る人々が、なぜあんなに面白くないドラマばかりを作るのか。それが不思議で仕方ありません。龍馬伝は、福山雅治氏のプロモーションビデオでした。龍馬がいかにすごいかということを描こうとして、周囲の人間がみんな愚かであるかのように描いてしまい、歴史の重みとか、凄さというのが伝わってきませんでした。おそらく、大河ドラマは、余計なことばかり考えて作るようになった、というのが実際だと思います。面白い作品をホンキで作るということよりも、地域の観光のための番組作りという点、アイドル等の有名人を登場させて、彼らをカッコ良く描こうとするという点、これまでにはない、新しい斬新な技術や技法を駆使するという点、その3点に力を入れすぎてしまっていると思います。
 平清盛で、地味な色彩で描いたというのも、愚かですが、色彩についてどこかの知事が苦言を呈したというのも、愚かです。『平清盛』の例を挙げましょう。父が、子に向かって強くなれ云々と説教するシーンがあるのですが、そういう子と父の心境を、二人の長時間の会話だけで表現しようというのがおかしいのです。父と子の心境は、他の多くの人物との会話、葛藤や光景を通して表現するべきなのです。説教タイムは短くても、前置きが十分あれば、短いひとことがずっしり重く響くのです。演技力の問題ではなく、シナリオの問題です。源義朝と清盛との若き日々の葛藤というのも、平原で二人だけが会話をしているというシーンは、もう、かるーい感じがするのです。ホームドラマかヒューマンドラマのようになってしまうのです。もっと、世界観をしっかり作りましょう。わき役が大事です!人物を増やし、全ての人物がそれぞれの熱い思いや願いを背負って生きているというふうに描きましょう。源氏の棟梁、平氏の棟梁の重みというのはそうやって表現するべきなのに、二人だけがぺちゃくちゃしゃべっていても重みは出てきません。印象的なシーンを作ろう、カッコイイシーンを作ろう、というのが前に出すぎると、逆にカッコ良さが半減するのです。(製作者たちはそのことに気付いているけど、どうしようもないという気持ちで作っているのかもしれません。)アイドルを多用したり、恋愛や美しさを強調したり、風景の描写に力を入れたり、技術を駆使して作ったり、そのような努力ばかりに目が向いてしまい、肝心の物語がグダグダなのです。人物をじっくり描くということは、物語をじっくり描くということとは違うのです。最近の大河ドラマは、主人公の表情を仰々しく描きすぎだと思います。(そんなに長い時間泣いている場合ではない)武士がわんわん泣いているシーンは、変でしょ?玉木宏にしても松山ケンイチにしても、彼らを長時間描けばいいかというと、そうではないのです。周囲のたくさんの人々が対立や葛藤しているということを描く。おそらくそれが大切です。一人が喋るシーンは短くていいのです。たくさんの人が登場して、それでもなお話の筋が分かるようにするのです。たくさんの庶民も必要です。そうするとやっと登場した主人公の背中に、多くの人物がのしかかり、重みが出てくるのです。セリフはそうやって生きてくるのです。静と動、静かな時間と激しい時間が交互にやってくると良いでしょう。個性的な人物が多く登場しながら、あらゆる葛藤がぶつかりあう。そこにすーっと登場する。それが一番主人公をカッコよく見せる方法なのです。
参考ブログ
遊人庵的日常
 「翔ぶが如く」を見る
(1)http://blog.goo.ne.jp/yujinan/e/2419a68f377c3a1ea93ab6816862bef4
NHK大河ドラマ 翔ぶが如く 完全版【第壱集】 [DVD] ジェネオン エンタテインメント(1話~27話)NHK大河ドラマ 翔ぶが如く 完全版【第弐集】 [DVD] ジェネオン エンタテインメント(28話~48話)
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Posted on 2012/08/12 Sun. 14:08 [edit]

category: テレビドラマ

thread: 大河ドラマ - janre: テレビ・ラジオ

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コメント

翔ぶが如く

翔ぶが如くのDVDを今更見ている最中です。鹿児島旅行から原作を読み始めたのがきっかけです。西南戦争までの長い8巻を読み終えて、どっぷり世界にハマり、でも西南戦争始まると、辛くて先が読めなくなり、DVDを買いました。
今まで大河は樅木は残ったと信玄のしか見てません。龍馬伝も見ました。最近の花もゆは安っぽすぎて腹がたつので嫌いでした。翔ぶが如くはすごい!原作読んでもガッカリさせずに見せてくれる。大久保どんがすごい。賢い!薩摩言葉がほとんどなのも素晴らしい。NHKの良心を感じました。アタマ使わない視聴者は民放に任せて、NHKは堅物の路線を貫いて欲しかったです。

URL | リンうー #-
2016/01/22 00:18 | edit

コメントありがとうございます。

リンうーさま。原作をお読みになられたのですね。本作のような素晴らしい作品をNHKには期待します。受信料も払っているので。『真田丸』は2回目まで見ましたが、本作に比べればコメディっぽさとかナレーションの多さとか気になりますが、これまでの駄作に比べればずいぶんよくなったと感じました。本作は何度見ても飽きない最高傑作だと思います。今後もよろしくお願いします。

URL | いもむしごんたろう #-
2016/01/22 22:12 | edit

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