『ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ』感想  

(作・絵:いわむらかずお、偕成社、1985年)夜の田舎を走る列車は怖い。窓の外は真っ暗だ。列車の中の風景がとてもリアルで、質感や匂いまで感じられる。ふと気付くと自分一人。…動物たちだ!なにやらヒソヒソ話をしている。みんなとても困っている。よく聞けば人間に対する不平不満の数々。イノシシやクマが登場。人間たちに復讐しようとしている。確かに人間は残酷だ。自然を改造し、利用する。必要なものは増やし、不要なものは処分する。それでいて自分たちが動物を殺して食べているという自覚も、申し訳ないという気持ちもない。なお、文字頁と絵頁の区別は、不気味さを増大させる。


 すっかり日も沈んでしまい、真っ暗な夜、しかしそれほど深夜ではない。地方のローカル線は本当に寂しい。列車の中は明るいのですが、外は真っ暗です。昼間の大自然の景色とは全く変わっていて、まるで宇宙を旅しているような錯覚に陥ります。一人の男が、うとうとしていると。どこからともなく会話が聞こえてきます。他の客?よく見るとそれは猿や鶏や鼠といった動物たちの会話でした。しかも、よく聞いてみると、「人間に殺された」とか、「人間に復讐する」とか、そういうトンでもない話をしています。彼らが話をしている内容は、「人間に役に立つ動物は、エサを与えられ、生かされる。」「人間に役に立たない動物は処分される。」そんな話でした。しばらく様々な話をした後で、動物たちは、「ここに人間がいる」ということに気付いて、一斉に列車を降りてしまいます。再び、がらんとした車内に戻ります。
 この絵本では、列車の中の暖かい空気や、暗い雰囲気が実によく描かれています。文字が書かれているページと、絵だけのページが交互に来ます。ゆったりとした時間が描かれています。動物たちの世界には、弱肉強食のような面もあります。しかしそこでは自分の生命維持のための作用が働いているのであって、全体としては食物連鎖が維持されています。人間はどうでしょう。特定の動物だけを囲い込み、増やし、育て、利用します。たくさん作って、余ったら捨ててしまいます。自分たちに危険を及ぼす動物は容赦なく殺します。動物たちはこのような身勝手な人間に対して、決していいように思っていないはずです。彼らはいつの日か人間に復讐をするかもしれません。もしそのような事態になれば、わたしたちは、許してはもらえないかもしれない。
 人間は全ての自然を利用します。海や森に対する畏敬の念、そこには人間以外の誰かが住んでいるという感覚は、ほとんど失われてしまっています。夜に人がいない森に入るとあまりにも真っ暗で怖い思いがします。しかしそこには幽霊や怪物がいるのではなく、人間ではない住人がいるのです。そこには入らずにそっとしておくという感覚は重要だと思います。人間の残酷さは、殺していること、略奪していること、にあるのでしょうか。それならば他の動物たちと変わりありません。殺しているにもかかわらず、略奪しているにもかかわらず、それを忘れて楽しそうに生きていること、自然との対話を失っていること。そこに残酷さがあります。
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Posted on 2011/10/27 Thu. 20:16 [edit]

category:   6) 自然への畏敬

thread: 絵本 - janre: 本・雑誌

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