『ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ』感想  

(作・絵:いわむらかずお、偕成社、1985年)夜の田舎を走る列車は怖い。窓の外は真っ暗だ。列車の中の風景がとてもリアルで、質感や匂いまで感じられる。ふと気付くと自分一人。…動物たちだ!なにやらヒソヒソ話をしている。みんなとても困っている。よく聞けば人間に対する不平不満の数々。イノシシやクマが登場。人間たちに復讐しようとしている。確かに人間は残酷だ。自然を改造し、利用する。必要なものは増やし、不要なものは処分する。それでいて自分たちが動物を殺して食べているという自覚も、申し訳ないという気持ちもない。なお、文字頁と絵頁の区別は、不気味さを増大させる。


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Posted on 2011/10/27 Thu. 20:16 [edit]

category:   6) 自然への畏敬

thread: 絵本 - janre: 本・雑誌

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『のにっき 野日記』感想  

(作・絵:近藤薫美子、アリス館、1998年)親イタチの死を子イタチが悲しむ。親イタチの身体は、多くの虫たちの餌となり、次の生命を生み出す。11月から冬と春を経て、5月までの時の変化。ゆっくりした時間の流れが絵本という形で具現化される。長い時間の変化を記録するのが日記である。ここに無数の虫や動物、出会いや葛藤などが凝縮される。食物連鎖という言葉では表現しきれない。私たちは死んだ動物をすぐに処理しようとする。私たちの死体はどんな動物にも触れさせない。はたしてそれでよいのだろうかと思ってしまう。文章のない絵本は、じっくり眺めたい。どんな音が聞こえる?


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Posted on 2011/12/01 Thu. 21:30 [edit]

category:   4) 自然に還る

thread: 絵本 - janre: 本・雑誌

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『おつきさま こんばんは』感想  

(作:林 明子、福音館書店、1986年)子どもにとっては不思議な存在。自分が移動しても同じ場所に浮かんでいる月。子どもにとって月は、人間の顔だ。うさぎではない。強烈な光はまるでこんばんはと挨拶している姿のよう。雲がやってくれば少し悲しそうな表情に見える。ただし雲によって月が消えてしまうわけではない。悲しいふりをして楽しんでいるだけ。舌を出すのはそのため。おちゃめな月。月は、どっしりとした存在。絵本では、月だけでなく、二匹の猫、月をながめる親子、なども描かれている。この子どもはとても思いやりのある子だと思わせる。
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Posted on 2012/03/28 Wed. 21:33 [edit]

category:   6) 自然への畏敬

thread: 絵本 - janre: 本・雑誌

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『かさ』感想  

(作・絵:太田 大八、文研出版、2005年)モノクロの中に少女の傘だけが赤色。それが意味するのは何か。少女は雨が好き。ぴちゃぴちゃした感触が好き。美しい傘が好き。そしてお父さんが好き。言葉はないのに、父親の優しい性格まで読み取れる。途中からその気持ちはケーキの喜びに移行する。幸せとは、半歩先にあって、まもなくその幸せがやってくるというその時間のことかもしれない。現代社会は便利さを追求するあまり、幸せが分からなくなっている。表紙に雨が描かれていないのはなぜか。おそらく表紙は写真のように一瞬を切り取った場面か。
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Posted on 2012/06/09 Sat. 17:26 [edit]

category:   2) 天気と私たち

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『はなをくんくん』感想  

(文:ルース・クラウス、絵:マーク・シーモント、訳:木島始、福音館書店、1967年)雪が深い静かな森の中。冬眠中の動物たちが目をさます。何かの匂いに引き寄せられる。くま、りす、のねずみたち。モノクロの世界の中で黄色い小さな花が咲いたのだ。コントラストが美しい。まもなく冷たく暗い冬が終わる。それを想って歓喜に湧く。私達は真冬でも暖房で春のような生活をしている。凍え死ぬことも食糧が尽きることもない。そのくせ桜が満開になれば酒を飲んで騒ぐ。私達は、もはや季節を感じていないのかもしれない。本書は感動や喜びの本当の姿を描いている。私達の現代社会は、煌びやかなものが溢れているがゆえに、感動が薄い。


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Posted on 2013/03/27 Wed. 19:32 [edit]

category:   1) 季節の変化

thread: 絵本 - janre: 本・雑誌

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『おおきなかぶ』感想  

(作:A・トルストイ、絵:佐藤 忠良、訳:内田 莉莎子、福音館書店、1998年)おそらく父母は働いて不在。近所にも頼る人がいない。そんな貧しい暮らしの話だ。抜けない=困った、大きい=嬉しい、という二つの感情が同時に起こる。自然の恵みに感謝しよう。リズミカルな楽しい話ではない。動物たちが協力するのは一緒に食べられるから。奉仕ではない。協力者がどんどん弱者になるのは、どの地点で抜けても「みんなが必要だった」と言えるからであろう。服をひっぱると力は出ないが、ロープを引っ張るという箇所を省略しているのだ。文章量を最小に抑えている。「ねずみがかじって抜けた」が原典らしいが、こっちの方がいい。
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Posted on 2013/07/20 Sat. 23:48 [edit]

category:   3) 食べること

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『はるにれ』感想  

(作・絵:姉崎一馬、福音館書店、1981年)北海道豊頃町にある樹齢140年のニレの大木。実は二本らしい。農場に立ち自然とともに撮るカットと自然に立ち農場とともに撮るカットがある。秋から冬になり、冬眠を迎える。心配する写真家に「もっと近くで撮ってくれ」などと語っているかのようだ。春にになり、元気よく登場する。彼らは月とも仲良し、たくさんの草達にも囲まれる。寂しくはない。私たち人間は、日々のことがらで悩んだり、悲しんだり、喜んだりする。ゆったりと生きるニレの大木に語りかけよう。おそらく彼らは私たちを優しく包み込んでくれる。本書は絵本だ。写真集ではない。
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Posted on 2014/11/08 Sat. 20:52 [edit]

category:   1) 季節の変化

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『はらぺこあおむし』感想  

(作・絵:エリック・カール、訳:もりひさし、偕成社、1976年)ジャンクフードはよくない、野菜を食べましょう、食べたものが貴方の身体になります、等というメッセージを受け取ることもできる。しかしいっそう強調されているのは、このカラフルな色彩であろう。この色彩感覚は、外国、とくに欧米のものである。アフリカともアジアとも違う。ラストの蝶もまた極めて派手だ。目がチカチカする。本書はカラフル=よい、地味=わるいという価値観を含む。しかし風や温度や音や質感などは捨象されている。日本人はもっと地味で落ち着いていて、しかも自然の美しさや風情を感じる存在だと思う。…「きれい」だけでよいのか?
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Posted on 2014/12/28 Sun. 00:41 [edit]

category:   3) 食べること

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『グリーンマントのピーマンマン』感想  

(作:さくらともこ、絵:中村景児、岩崎書店、1983年)壮大な間違い。本書を読んだらピーマンが食べたくなる? ありえない。子どもがピーマンの苦味が嫌というならば諦めた方がいい。説教の代わりに芸術作品を使うべきではない。食育ならばピーマンの栄養素や生命性を取り上げ、「ピーマンは美味しい」と伝えるべきだ。苦いことを認めるべきではない。また、本書の主人公はカッコよくない。ヒーローならば子どもに嫌われたくらいで泣くな! なお、バイキンはまだ何も悪いことをしていない。ピーマンは免疫力を高めるのであって、殺菌するわけではない。苦さや臭さを武器にするべきではない。全て問題。
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Posted on 2015/05/07 Thu. 23:50 [edit]

category:   3) 食べること

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『てぶくろ』感想  

(作:ウクライナ民話、絵:エウゲーニー・M・ラチョフ、訳:内田莉莎子、福音館書店、1965年)真冬の雪深い森の中、おじいさんがてぶくろを落とした。あたりはとても寒い。てぶくろの中はとてもあったかそうだ。そこにあつまる動物たち。ねずみ、かえる、うさぎ… しだいに大きな動物たちが集まる。てぶくろもぐんと膨らむ。そこに小さな世界が出来る。おおかみ、いのしし、くま…そんなには入れない!寒い中、心を寄せ合う動物たち。乱暴な動物もここでは誠実だ。みんなでいると暖かい。会話も膨らむ。おじいさんがてぶくろを取りに戻ると、動物たちはいっせいに逃げていく。かといって悲壮感はない。人々の優しさと想像力が生み出した物語。
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Posted on 2015/11/30 Mon. 22:01 [edit]

category:   1) 季節の変化

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