『ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ』感想  

(作・絵:いわむらかずお、偕成社、1985年)夜の田舎を走る列車は怖い。窓の外は真っ暗だ。列車の中の風景がとてもリアルで、質感や匂いまで感じられる。ふと気付くと自分一人。…動物たちだ!なにやらヒソヒソ話をしている。みんなとても困っている。よく聞けば人間に対する不平不満の数々。イノシシやクマが登場。人間たちに復讐しようとしている。確かに人間は残酷だ。自然を改造し、利用する。必要なものは増やし、不要なものは処分する。それでいて自分たちが動物を殺して食べているという自覚も、申し訳ないという気持ちもない。なお、文字頁と絵頁の区別は、不気味さを増大させる。


-- 続きを読む --
スポンサーサイト



Posted on 2011/10/27 Thu. 20:16 [edit]

category:   6) 自然への畏敬

thread: 絵本 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

『おつきさま こんばんは』感想  

(作:林 明子、福音館書店、1986年)子どもにとっては不思議な存在。自分が移動しても同じ場所に浮かんでいる月。子どもにとって月は、人間の顔だ。うさぎではない。強烈な光はまるでこんばんはと挨拶している姿のよう。雲がやってくれば少し悲しそうな表情に見える。ただし雲によって月が消えてしまうわけではない。悲しいふりをして楽しんでいるだけ。舌を出すのはそのため。おちゃめな月。月は、どっしりとした存在。絵本では、月だけでなく、二匹の猫、月をながめる親子、なども描かれている。この子どもはとても思いやりのある子だと思わせる。
-- 続きを読む --

Posted on 2012/03/28 Wed. 21:33 [edit]

category:   6) 自然への畏敬

thread: 絵本 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

『うらしまたろう』感想  

(絵:秋野不矩、再話:時田史郎、福音館書店、1974年)たろうは、亀を助けたことで、乙姫とともに竜宮城へ招待される。その後、竜王の子になり、乙姫との幻想的で幸せな日々を送る。里に戻る決心をしたのは3年後。陸では300年たっていた。玉手箱を開けると煙が舞い、白髪の老人になってしまう。たろうからすれば何とも不条理な話だ。海というのは、美しく優しいイメージがあり、魚たちの楽園、豊かな幸の宝庫である。その一方、水難事故で命を落とすこともある。津波という自然の脅威もある。本書は海に対する両義的な意味を描いているように思われる。それにしても美しい絵である。波の音が優しい。
06(06)03.jpg

Posted on 2015/12/01 Tue. 21:57 [edit]

category:   6) 自然への畏敬

tb: 0   cm: 0

『はずかしがりやのおつきさん』感想  

(作・絵:スズキコージ、福音館書店、2014年)月の色は青白くて不気味だ。この光には、青だけでなく多くの色が混じっていると思う。馬のロシナンテは、月明かりを頼りにおばさんに手紙を書く。馬は昼間、馬車を引くので何も出来ない。手紙を書けるのは月夜の晩だけだ。ただし月があまりにも明るく、馬車の中の少女や犬や猫たちまで目をさましてしまう。夜中に昼間のような雰囲気が出ていることもまた不気味だ。みんなで月を見つめる。太陽は直視できないが月ならば可能だ。月は、恥ずかしく思い、雲の後ろに隠れてしまう。みんなが寝静まった後に、月は静かに踊り出す。月には不思議な力がある。
06(06)04.jpg

Posted on 2016/01/13 Wed. 21:33 [edit]

category:   6) 自然への畏敬

tb: 0   cm: 0

『ちいさな島』感想  

(作:ゴールデン・マクドナルド、絵:レナード・ワイスガード、訳:谷川俊太郎、童話館出版、1996年)大海原に浮かぶ小さな島。ぽつんとしていて寂しいように見えるが、実は多くの動植物や虫たちで賑やかである。小さな島であってもそこには季節の変化や生き物たちのドラマがある。北からアザラシが、南からカワセミがやってくる。情景描写はとても美しい。旅人とともに黒猫が訪れて、島や魚と会話をする。島は、海と深いところでしっかりとつながっている。それでいて自分の世界を明確に持っている。海が広いからこそ島は小さい。島は、海から離れて別世界を作るからこそ、海とつながることができる。逆説的であるが、これは全ての生命体に共通する。
06(06)05.jpg

Posted on 2016/03/14 Mon. 21:41 [edit]

category:   6) 自然への畏敬

tb: 0   cm: 0

『よあけ』感想  

(作・絵:ユリ・シュルヴィッツ、訳:瀬田貞二、福音館書店、1977年)絵が円形の内側に描かれているのは、主人公のぼおっとした意識を示しているのだろう。夜明け前の静かな風景。なんともいえない空気感。少しずつ明るくなる様子が見事に表現される。毛布にくるまった祖父と孫が目を覚ます。ボートに乗り、湖に漕ぎ出す。山と湖が緑になり、風景に色彩がつく。世界がぐっと広がった感じだ。祖父と孫の会話はないが、祖父は優しい表情。一晩を明かすと、すっきりした気持ちだけでなく、なにか自然と一体になれたような不思議な感動が得られる。人間同士の些細なことを忘れる瞬間だ。祖父は孫に多くのことを教えている。
06(06)06.jpg

Posted on 2016/03/24 Thu. 21:34 [edit]

category:   6) 自然への畏敬

tb: 0   cm: 0

『トヤのひっこし』感想  

(文:イチンノロブ・ガンバートル、絵:バーサンスレン・ボロルマー、訳:津田紀子、福音館書店、2015年)まるで歴史絵巻物。モンゴルの大草原の話。まもなく冬がやってくる。家族は馬やラクダを引き連れ、暖かい南の方へと移動を始める。移牧だ。荷物をまとめ、歌を歌いながら歩き出す。他の家族も移動中だ。夜はオオカミが近づく。砂漠と山を越える長旅。知らない人々とも支え合う。厳しくも美しい大自然が描かれる。心配したり、頑張ったり、喜んだり、学んだり。様々な生活を、風景の中で感じる。本来、私たち人間は自然と闘い、自然と共存しながら生きてきた。遠くまで引越をすると嫌なことや辛いことは忘れる。新しい気持ちで新しい関係を構築する。
06(06)07.jpg

Posted on 2016/04/28 Thu. 21:38 [edit]

category:   6) 自然への畏敬

tb: 0   cm: 0

『ぼくからみると』感想  

(文:高木仁三郎、絵:片山健、のら書店、2014年)昼過ぎのひょうたん池でよしくんは魚釣りをしている。よしくんから見た風景。自転車にのるしょうちゃんの視点。魚の視点。カイツブリの視点。とんびの視点。かやねずみの視点。それぞれの視点によって見える風景が全く異なってくる。いずれもとても美しい光景だ。複数の視点を組み合わせれば、その場の全体像が浮かび上がる。とびがかやねずみを捕獲し、猫が魚を奪って逃げる。森の生態系は無数の生物たちによって成り立つ。追いかける側と逃げる側、いずれも生死をかけた懸命な営みである。人間はのんびり遊んでいる。犬もまた人間の側に含まれる。
06(06)08.jpg

Posted on 2017/02/07 Tue. 21:45 [edit]

category:   6) 自然への畏敬

tb: 0   cm: 0

『きこえる』感想  

(はいじまのぶひこ、福音館書店、2012年)うさぎの耳は音を集めるように出来ている。何が聞こえるだろう。風が吹き、木々が揺れ、鳥が飛び立つ。花が開く微かな音、星の光る音。小さな変化であっても音があるはず。動物の音や自然の音。本書で描かれるのは薄い色彩の僅かな姿である。不思議である。頁をめくっていくうちに本当に聞こえてくるようだ。映像が不完全であると私たちは自分の脳を動かし自ら作り上げようとする。音というのは、聞こえてくる部分とこちらが意識して作り上げていく部分との両者によって形成されるのだ。現代社会はあまりにも情報が多すぎて、本当の音が分からない。
06(06)09.jpg

Posted on 2019/01/26 Sat. 22:37 [edit]

category:   6) 自然への畏敬

tb: 0   cm: 0

『どんぐり かいぎ』感想  

(作:こうやすすむ、絵:片山健、福音館書店、1995年)森の木々たちがどんぐりをたくさん作る。落ちたどんぐりを動物たちが食べ尽くしてしまい、次の木が育たなくなってしまう。特に文字と絵の配置がよい。文字を読んだ後じっくりその美しい情景を眺める。是非、音楽と合わせて聞きたい。動植物の声や表情が浮かび上がる。生きるか死ぬかの瀬戸際で、必死でもがき苦しむ。悩んだり考えたり、試行錯誤しながら生きている。それは壮大なドラマである。森は全体として生きている。この話を「食物連鎖」などの冷たい言葉でまとめるべきではない。名作絵本だ。自然を理解するというのはこういうことだと思う。
06(06)10.jpg

Posted on 2019/09/06 Fri. 23:16 [edit]

category:   6) 自然への畏敬

tb: 0   cm: 0

プロフィール

カテゴリ

最新記事

最新コメント

お客様

検索フォーム

リンク


▲Page top