『かばくん』感想  

(作:岸田衿子、絵:中谷千代子、福音館書店、2001年)日曜日の動物園。少年はカバに呼びかける。「おきてくれ ねむいならねむいといってくれ」「きらいならきらいといってくれ」カバは少年の語りに答えないのだが、確かに反応している。少年とカバでは言葉の使い方や時間の感覚が微妙に違う。本書はそれをうまく表現している。子どもたちが大勢やってくる。直接会話をしているわけではないが、そこにはコミュニケーションが成立している。小さな亀はカバの大きさを強調する。カバと亀はどちらもゆったり泳ぐ。亀はキャベツよりも小さい。カバが亀を飲み込んでしまうかもと心配になる。…でも大丈夫だ。
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Posted on 2015/12/15 Tue. 21:36 [edit]

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『か・げ』感想  

(作・絵:武田美穂、ポプラ社、2014年)男の子は、手で犬の形を作って影にする。ペットのバウちゃんがそれを興味深く見つめる。障子や座布団にも影、怒りん坊の母の影、石や虫にも影が出来る。歩く人の影、自転車の走る影、鳥の影。どれもみな同じ影だ。巨大なマンションの影、町全体に広がる大きな雲の影、ふだんは気付かないが、一つの雲で一つの影が出来ている。それはゆったりと移動する。私たちは知らず知らずのうちに、その中に「いる」のだ。実態と影という対比は、あらゆる事象に共通する。影という共通点から世界をとらえたような気分だ。最後に、影を通して母の優しさが見える。
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Posted on 2015/12/15 Tue. 21:37 [edit]

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『きたかぜとたいよう』感想  

(作:蜂飼耳、絵:山福朱実、岩崎書店、2011年)北風と太陽の喧嘩。どっちが人間の服を脱がせるか?北風という外側からの強引な圧力では無理なことも、太陽の熱風による内側からの誘因によって可能になる。本書は外発的動機付けと内発的動機付けの違いを示す。他者を動かすためには他者の意欲を動かすことが大切だ。本書において、人間は天気同士の葛藤や喧嘩を知らない。寒さと暑さという正反対の天気によって私たちは苦しんだり悩んだりするが、それら天気の変化は、いわば天空の神々の些細な遊びや喧嘩だということである。私たちは天気についてあれこれ要望を持つよりも、素直に従うしかない。
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Posted on 2015/12/15 Tue. 21:38 [edit]

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『こやたちのひとりごと』感想  

(作:谷川俊太郎、写真:中里和人、ビリケン出版、2007年)私たちが普段、目を向けることのない小屋に、作者は優しい眼差しを向ける。小屋たちは語る。どこかへ行きたいと思わない。空に挨拶をする。そんなのんびりした文章が続く。大工が建てたわけではなく、普通の人が建てた。だから「すき」 小屋を建てた人の人柄も伝わる。みんなとても個性的で、かわいい。自然に囲まれ、隙間だらけ。中は空っぽ。人間界と自然界の中間。風雨に曝され、いまにも壊れそうだ。それでも確かにそこに「いる」。こうやって眺めていると不思議とあたたかい気分になる。まるで「そんなに無理しなさんな」と囁いているようだ。
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Posted on 2015/12/30 Wed. 22:24 [edit]

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『ノアの箱舟』感想  

(作・絵:アーサー・ガイサート、訳:小塩節・小塩トシ子、こぐま社、1989年)神はノアたちに箱舟を作るように言う。あらゆる動物たちが集結する。雨が降り、ついには洪水となる。ノアの家族たちは懸命に働く。動物たちに水と食べ物を与え、船内を清潔にする。動物たちは狭い船内で仲良く暮らす。大地が戻り、動物たちは大地に帰って行く。本書は創世記をリアルに表現する。ここには、自然と闘い、人間が知恵と連帯で世界秩序を作るという西洋的世界観がある。世界が破滅するという前提の人間観。そういう神話で納得するのが西洋人だ。なお本書は、黒い線だけで壮大なスケールを描いていて素晴らしい。質感や空気感まで伝わる。
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Posted on 2015/12/30 Wed. 22:25 [edit]

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『きつねのかみさま』感想  

(作:あまんきみこ、絵:酒井駒子、ポプラ社、2003年)少女が縄跳びの紐を忘れてしまった。取りに戻るとそこにはない。林の奥で狐たちが縄跳びをしている。少女が無くしたその紐で遊んでいるのだ。よく見るとうまく跳べない。少女は狐たちと遊ぶことにした。どうやら狐は縄跳びがしたいと神様にお祈りした後で、この紐を見つけたらしい。少女はそのまま紐は取り返さずに帰ることにした。本書は人間界と自然界との境目における出会いを描く。私たちと動物たちは世界こそ違うが、同じ場所を共有している。こちらの落し物は、あちらでは神の賜物だ。謙虚さ、相手の世界を大切にするという姿勢は素晴らしい。
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Posted on 2016/03/09 Wed. 21:32 [edit]

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『サリーのこけももつみ』感想  

(作・絵:ロバート・マックロスキー、訳:石井桃子、岩波書店、1986年)山に苔桃を採りに行った親子。反対側から熊の親子が苔桃採りに来る。どちらも冬に備えてたくさんの苔桃を採ろうとしていた。おそらくはスカッとした秋晴れだと思う。苔桃をバケツに入れる音が響くが、それは静かでゆったりとした時間だからであろう。広い高原で夢中になって苔桃を採っていると、自分の子を見失う。ついに親子が入れ替わってしまう。そのトラブルも、この広い高原の中では大きな事件になることはない。一歩下がればよいだけだ。自分の子を見失ったとしても、広い高原の中ではすぐに見つかるだろう。大自然の中で、人は優しくなれる。
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Posted on 2016/03/20 Sun. 15:11 [edit]

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『ちいさいおうち』感想  

(作・絵:バージニア・リー・バートン、訳:石井桃子、岩波書店、1965年)広い平原に小さいけれども立派で頑丈な家があった。この家は、一日や四季の変化を感じながら、長い間、幸せに暮らしていた。ある日、自動車、トラックが来た。工事が始まり、道路や住宅地が出来た。車や電車が多く通るようになり、周辺にはビルが立ち並び、気が付けば大都市だ。夜は明るく、四季もなくなる。頑丈ではあるが、表面はボロボロ。元気がない。そんなある日、この家を建てた人の子孫が家を発見する。自然いっぱいの平原へと引越である。本書の家は喜んだり悲しんだり、眠ったりする。私たちにとっての便利な空間は生活する空間ではない。
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Posted on 2016/04/20 Wed. 21:15 [edit]

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『ありさん どうぞ』感想  

(作・中村牧江、絵・林健造、大日本図書、2009年)まずは蟻を観察してみよう。一列に並び、まっすぐに進む。怠け者はいない。どんな心境か。ふとビー玉が転がると、蟻たちの行動は大きく乱れる。そしてまた戻る。本書は人間と自然との出会いの本だ。同じ時間、同じ空間を共有しながら、二つの世界は決して交わることがない。人間にとっての玩具が蟻にとっては巨大な岩石だ。落としたお菓子の欠片はまるで巨大な財宝だ。共通理解になることはない。なんだか不思議な気がしてくる。本書は蟻の気持ちに共感していく。幼児は蟻にイタズラをするのは、蟻の世界観を理解しようとしているからかもしれない。
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Posted on 2018/05/13 Sun. 01:11 [edit]

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