『ぼくは、くまのままで、いたかったのに』感想  

(作:イエルク・シュタイナー、絵:イエルク・ミュラー、訳:おおしまかおり、ほるぷ出版、1978年)クマは気がつくと工場労働者と間違えられ、自分が人間だと思い込む。工場をクビになり森へ解放されてもなお、自分のことを思いだせない。本書は、間違えられてかわいそう、自分を強く持て、という話ではない。アイデンティティとは他者とのかかわりの中で常に上書きされる。お父さんと呼ばれ続ければお父さんになり、課長と呼ばれ続ければ課長になる。本当の自分など、誰も知らないのだ。一人冬眠するのにクマというアイデンティティは不要だ。本書が描く最も怖いものは、利潤を得るために一切の自然を破壊し、人間をロボット化していく資本主義だ。
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Posted on 2011/11/12 Sat. 21:40 [edit]

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『けっして そうではありません』感想  

(作・絵:五味 太郎、リブロポート、1992年)角砂糖の近くに蟻がよっていけば、その角砂糖を食べに来ているのだと思う。しかし「そうではありません」と五味は言う。花の下で待ち合わせをしているのだと。人間は動物や虫の行動をみて、その行動の意味や目的を読み取る。しかし実際に彼らに聞いたわけではない。動物や虫たちにはその小さな世界があるはずだ。人間の解釈を押し付けてはならない。私達が女性に花束をプレゼントするのは生殖目的ではなく、幸せな気持ちになりたいから。私達の知る能力には限界があることを知ろう。彼らの本当の気持ちを想像する時、私達は豊かな心を手にする。

Posted on 2012/12/26 Wed. 20:41 [edit]

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『わたし』感想  

(作:谷川俊太郎、絵:長新太、福音館書店、1981年)言葉は、絶対的存在としての自分を中心にしてではなく、他者との相対的な関係で形成されていく。わたし。あなた。大人になると呼称は増えてくる。父であり、夫であり、職員であり、客であり、住民である。名前は、彼の言動をも決定し、そこから逸脱すれば問題視される。「それでも父か?」と。たまには全て忘れて変身したくもなる。私たちは、ひとくくりにして呼ばれることもある。それは暴力的だ。大衆の中の一人になり、個性を失うこともある。一人ひとりが存在感を持つためにはどうすればよいか。橙と黄の長新太の絵は強烈な問題提起となる
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Posted on 2013/06/29 Sat. 22:46 [edit]

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『わたしのワンピース』感想  

(作:西巻茅子、こぐま社、1969年)真っ白のワンピース。お花畑に行けば花模様、雨が降れば水玉模様、小鳥が集まれば小鳥の模様、虹に向かって飛べば虹模様。「わたしににあうかしら」と投げかける。美しい風景を切り取り、それに手を加えて身に纏う。全てお似合いだ。まさしくこれを「おしゃれ」と呼ぶ。このような能力に欠ける者が、それでもなお目立とうとしてブランド物や茶髪やアクセサリーで誤魔化そうとする。本書でうさぎは、服装を変えるとともに、気分や性格をも変えていくようだ。アイデンティティの欠落ではなく、逆に広い心をもった豊かなアイデンティティに見えてくる。
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Posted on 2015/12/14 Mon. 21:56 [edit]

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『ワニくんのおおきなあし』感想  

(作・絵:みやざきひろかず、BL出版、1985年)みんなと比べて、自分の足が大きい。画鋲を踏んだり、人に踏まれたりする。ワニくんは、自分の身体にコンプレックスを抱く。注目されるのも嫌だ。私たちはプラスよりもマイナスの方がよく目につく。さらに今の自分がかわいそうだと思い、「もし○○だったら、よかったのにな~」と想像する。気持ちの上で「自分」と「自分の足」を区別するのだ。ワニ君は一歩先へ進み、自問自答する。風が強い時でも支えられる、水の中でうまく泳げる、いいこともある。長所を見つめて、短所を見ないようにしている。自分の短所を引き受けるのは、とても崇高な力だ。
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Posted on 2015/12/14 Mon. 21:57 [edit]

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『でこちゃん』感想  

(作・絵:つちだのぶこ、PHP研究所、1999年)髪を切りすぎてしまい、家族に笑われてしまう。落ち込む女の子。顔を笑われるのであるからなかなかキツイ。しかしそれ以上に落ち込んでいないところがいい。周囲も軽く流すくらでちょうどよい。買い物へ出ると大人たちが視線を向け声をかけてくれている。本人はつらいが、やはり温かな世界である。お姉さんがヘアスタイルを整え、これでよし! 解決とは、髪が伸びた時ではなく、気にしなくなった時である。人々の豊かな様子を見ていると髪の長さが気にならなくなる。本書はそう促しているかのようだ。苺のパワーかも。いかにも子どもらしい目だ。
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Posted on 2015/12/14 Mon. 21:58 [edit]

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『こしぬけウィリー』感想  

(作:アンソニー・ブラウン、訳:久山太市、評論社、2000年)ウィリーは蠅も殺せない「こしぬけ」。ぶつかったり、チンピラに絡まれるとすぐに謝ってしまう。体力づくりの本を購入し、体力を鍛える。体操、ジョギング、ボクシング… ついにウィリーはムキムキの筋肉を手に入れた。チンピラを追い払う。もう、こしぬけじゃないぞ!しかしその後、電柱にぶつかるとつい謝ってしまう。本書の意図は分からない。筋肉はついたが心は以前のまま(心は鍛えられない)ということか。筋肉はついていなかったのに、力持ちの気分に浸っていた(想像だった)ということか。そもそも本を読んで体力を鍛えるというのも変だ。
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Posted on 2015/12/14 Mon. 21:59 [edit]

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『たいせつなこと』感想  

(作:マーガレット・ワイズ・ブラウン、絵:レナード・ワイズガード、訳:うちだややこ、フレーベル館、2001年)私たちはスプーンに対して適切なサイズや機能を求めてしまうが、スプーンにとって大切なことは上手に食べることだ。私たちは雨に対して、音や生命力を求めてしまうが、雨にとって大切なことは潤すことだ。りんごにとって大切なことは丸いことだ。私たちは多様さと変化の中で生きているが、つい当初の目的を離れてしまう。そんな時には原点を思い出そう。本書は、あなたにとって大切なことはあなたがあなたであることと提起する。勿論成長したり、迷ったり、遊んだりすることも大切である。そして時には原点に帰ることも大切である。原点は、どこか?
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Posted on 2016/01/22 Fri. 22:04 [edit]

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『あたまをなくしたおとこ』感想  

(作:クレール・H・ビショップ、絵:ロバート・マックロスキー、訳:もりうちすみこ、瑞雲舎、2011年)朝起きたら頭がない。微かな記憶を頼りに頭を探しに出かける。探求の間は、仮の頭を据えておこう。かぼちゃ、にんじん。それじゃ人目に付きすぎる。木製の頭で代用だ。彼は頭を探しに出たはずだが、祭りで遊んでしまう(1940年代の風景)。出会った少年に相談してみるが、少年の「魔術師にならないか」という誘いに乗ってしまう。本書の主人公の目的は、自分探しであると同時に世界探検でもある。虚構や欺瞞や欲望が渦巻くこの時代にあって目的達成は困難である。特に彼は頭が無いために、あまり深いことは考えられない。周囲の声に惑わされる。
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Posted on 2016/01/22 Fri. 22:04 [edit]

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『ぼく、どこにでもいるカバです』感想  

(作・絵:みやざきひろかず、BL出版、1988年)カバくんは、嬉しい時に怖い表情になってしまう。それゆえ周囲とはうまく関係が築けない。自分の意図とは逆に受け止められてしまうことは、よくあることである。その場合、人間関係はなかなかスムーズにいかない。カバくんは自分の顔を責めてしまい、さらには嬉しい気持ちにならないように努力する。信頼できる先生は、カバくんの心境も理解してくれていた。理解者がいると幸せだ。「いつものすてきなえがおは?」と聞かれてはっとする。カバくんは再び、素直に喜ぶことにした。自分がここに存在するということを公言し続けることは、大切なことだ。
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Posted on 2016/02/17 Wed. 21:48 [edit]

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