『ぞうのさんすう』感想  

(作・絵:ヘルメ・ハイネ、訳:いとうひろし、あすなろ書房、2000年)うんちの足し算という一見すると簡単な動作だが、それが意味するものはとても深い。人間の一生をこんなふうに圧縮してみれば、なぜか読者の心は揺さぶられる。私達はこの運命から離れることはできない。しかしながら、あるいは運命であるがゆえに、無数の喜びと感動があるのかもしれない。
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Posted on 2011/11/08 Tue. 22:48 [edit]

category:   1) 人生を振り返る

thread: 絵本 - janre: 本・雑誌

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『おやすみなさいのほん』感想  

(作:マーガレット・ワイズ・ブラウン、絵:ジャン・シャロー、訳:石井桃子、福音館書店、1962年)夜とは、全ての動物にとっての休息の時間だ。様々な動物が描かれる。どんな猛獣であっても休息は必要である。やはり全ては「弱い存在」なのだ。休息の時は無防備になる。車や飛行機も、人間が使用しない夜には休んでいるはず。本書では、神様が登場する。全ての動物は休息を必要とするという点で同じ。神の下では平等。私たちは自分の子どもの無防備な寝顔を見て、その幸せを祈りたくなる。信仰の基本は、かよわい子どもたちの幸せを願うところにある。最後にやってきたのは朝だ。経験は思い出となり、悲しみは少しだけ減り、新たな未来が始まる。

Posted on 2011/12/12 Mon. 21:02 [edit]

category:   4) 祈りを捧げる

thread: 絵本 - janre: 本・雑誌

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『おじいちゃん』感想  

(作・絵:ジョン・バーニンガム、訳:谷川俊太郎、ほるぷ出版、1985年)女の子とおじいちゃんの二人の時間。印象的な言葉だけが描かれる。それゆえ読者は前後の文脈を想像して読むことが必要だ。二人は時間の感覚が異なっているのだから、会話はぎこちなく、かみあわない。言いたいことを言い、独り言のようになる。むしろ自然な関係だ。ただ空想の世界へ入れるという点で二人は共通する。あらゆる場面で死が暗示され、しだいに死へと近づくおじいちゃん。急速に成長する女の子。そして訪れる静かな死。ベビーカーをおして走る女の子。兄弟が出来たのだ。死の後に、生が描かれる。絵本全体は女の子の回想か。美しい風景。

Posted on 2011/12/21 Wed. 22:00 [edit]

category:   2) 死期を感じる時

thread: 絵本 - janre: 本・雑誌

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『ばすくん』感想  

(作:みゆきりか、絵:なかやみわ、小学館、2007年)お客さんの笑顔を見るのが幸せな路線バスの話。ついに古くなり、山奥のバス会社に売られる。さらにその後、森の中で捨てられてしまう。これは不法投棄である。しかし本書を純粋にファンタジーとして読んでみよう。解体は死、放置は延命である。それを素直に喜ぼう。後に、動物たちが集まり、バスに乗る。バスくんは再び幸せを得る。私達はここに人生の老いを重ねて読むことが出来る。一度現役を引退し、誰からも必要とされなくなった。しかし次は第二の人生が始まるのだ。表紙のバスくん。行先は「こころ行き」バスが最後に到着するのは温かい心か。

Posted on 2013/05/09 Thu. 00:05 [edit]

category:   2) 死期を感じる時

thread: 絵本 - janre: 本・雑誌

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『チリンのすず』感想  

(作・絵:やなせ たかし、フレーベル館、1978年)狼に母親を殺された子羊が、復讐のために狼の弟子になる。か弱い羊は狼に育てられ、いつしか強くなる。目つきがすごい。その一方、子羊は狼の強さと優しさに気付き、迷いが生じる。母への気持ちを貫くか、狼への感謝の念を大切にするか。復讐してもしなくても、後味は悪い。最初は、嘘をついて狼に従っていたが、いつしかそこに気持ちが入ってしまう。そういう体験は貴重だ。最初の気持ちを貫くだけが人生ではない。葛藤や迷いを生きると人は奥深さや思いやりを得る。スッキリしないからこそ豊かなのだ。人生の不条理は、子どもに伝えておいてよい。
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Posted on 2013/11/01 Fri. 06:09 [edit]

category:   3) 人生の不条理

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『ルピナスさん』感想  

(作・絵:バーバラ・クーニー、訳:掛川恭子、ほるぷ出版、1987年)少女アリスは、祖父に大切に育ててもらう。アリスは「大きくなったら遠くの世界へ行きたい。老いたら海の近くに住む」と自らの夢を語る。すると祖父は「世の中を美しくするために何かしてほしい」とアリスに伝える。大きくなったアリスは、南国や雪山、ジャングルや砂漠で様々な人々と出会い、最後は海で静かに暮らす。その後、老いたアリスは、ルピナスの花を植えて町中を美しくするということを思いつく。大人は子どもたちに夢を与えるべきである。夢とは、職業ではない。心の隅に置いておき、いつか叶えたらいいなと思うような美しい理想である。
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Posted on 2015/12/15 Tue. 21:44 [edit]

category:   1) 人生を振り返る

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『つみきのいえ』感想  

(文:平田研也、絵:加藤久仁生、白泉社、2008年)老人が一人で家に住む。海面は上昇し、水面下には過去の家(記憶)が蓄積されている。まるで積木のようだ。潜ってみると、過去を思い出す。本書は温暖化の話ではない。過去の人生を土台にして現在があるということ、ふだんは過去を忘れているということ、常に波の向こうから新しい出会いがあるということ、にもかかわらず過去が幸せであればあるほどそこから離れられないということ、等を示している。本書は、人生を象徴している絵本だ。なお最後のシーンで、老人はたんぽぽを発見して喜ぶ。大地はなくとも、ここから新しい命がスタートできるのだ。
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Posted on 2015/12/15 Tue. 21:45 [edit]

category:   1) 人生を振り返る

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『だいじょうぶ だいじょうぶ』感想  

(作・絵:いとうひろし、講談社、1995年)祖父と僕の大切な時間。祖父と一緒だと世界が広がる。同時に恐怖も訪れる。祖父は様々なことを教えてくれる。距離の取り方、危険や危機の実際の頻度等である。「だいじょうぶ」という声かけは、お題目のように唱えるのではない。問題は解決するのであるから必要以上に脅えなくてもよいということだ。でんと座っていればいい。楽しいことはいくらでも見つかる。…祖父が死に近づいた時、今度は僕が声をかける。僕の言葉「だいじょうぶ」には明確な根拠はない。しかし祖父は、少年が立派に成長し、祖父の生きた証を強く残していると実感できるだろう。
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Posted on 2015/12/16 Wed. 22:22 [edit]

category:   2) 死期を感じる時

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『スーホの白い馬』感想  

(作:大塚勇三、絵:赤羽末吉、福音館書店、1967年)歌の上手い少年スーホが白い仔馬と出会う。大切に育てるスーホ。白馬を殿様に奪われ、スーホは助けることが出来なかった。決死の思いで脱出する白馬。スーホのもとに到達した時には命は尽きていた。悲しみにくれるスーホはついに白馬の亡骸で楽器「馬頭琴」を作る。…白馬が死んだ理由も、死んだことさえも、不条理である。人間の判断や能力を超えている。出会いもまた不思議なことだった。それゆえ人の心は動き、人は音楽を奏でる。遠い昔の話であるから、風景も輪郭もぼやける。しかし地平線は力強く存在している。馬頭琴の音色が大地に響き渡る。
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Posted on 2015/12/16 Wed. 22:27 [edit]

category:   3) 人生の不条理

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『聖なる夜に』感想  

(作・絵:ピーター・コリントン、BL出版、2000年)文字のない絵本。読者が語りをつけてもよい。雪の降る寒い日、貧しい老婆。アコーディオンを奏でて生きてきたが、ついに食べるものが無くなり、アコーディオンを売ってしまう。手にした金は、ひったくりに奪われてしまう。まさにどん底。ひったくりはそのまま教会を襲う。老婆は荒らされた教会に入り元通りに戻す。その夜、教会の木像たちが動きだし、老婆を助けようとする。老婆や弱者に冷たい社会の中で、全ての希望が失われた世界において、唯一の救いが信仰である。木像たちのお礼というよりは、老婆を助けることが出来なかったせめてもの償い。
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Posted on 2015/12/16 Wed. 22:29 [edit]

category:   4) 祈りを捧げる

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