『やきもちやきのねこ』感想  

(作:俣野温子、ほるぷ出版、1996年)野良猫は自分のことが嫌い。他の猫や幸せそうなネズミ、さらには富にあふれる人間を見て、やきもちを焼く。ある日、人間のおばさんに拾われ、不自由のない生活になる。しかしそこからこの猫はおばさんに別れを告げて去る。どうしてもいかなければならない。自分に言い聞かせる言葉がカッコイイ。この猫が家を出るのはなぜか。本書では何の説明もヒントもない。衣食住が満たされても心の中は満たされていないのか。いや、心の中が満たされたからこそ次の世界に行きたくなったのか。あるいは、自分の力で力強く生きている他の猫のことを想起したのか。
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Posted on 2023/02/26 Sun. 21:16 [edit]

category:   2) 最も私らしい私

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『そらいろのたね』感想  

(作:中川李枝子、絵:大村百合子、福音館書店、1967年)ゆうじは、キツネにもらった空色の種を植えてみる。水をかけて待つと家が生えてくる。鳥や猫たちが家を利用する。大きな家になりゆうじはみんなを招待する。そこへキツネが戻ってきて、もとは自分のものだと主張する。きつねが独占すると家は消えてしまう。キツネは、他人が持っているもの、特に見栄えのよいものを欲しがる。自分に自信がないのだ。見栄えのよいものを自分が手にしたからといってそれは空虚である。真に自信のある者は、自らの内側から湧き出るものを他者に贈与しようとする。家が大きくなったのは、ゆうじの心の広さを示している。
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Posted on 2023/02/26 Sun. 21:15 [edit]

category:   1) 自己の誇示

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『オレ、なんにもしたくない』感想  

(作:デヴ・ペティ、絵:マイク・ボルト、訳:小林賢太郎、マイクロマガジン社、2019年)何もしたくないという無気力なカエル。何もしたくない、したいことが見つからないということを強く主張(自慢?)しているかのようだ。周囲がアドバイスをしてもそれは面白くないという。冷ややかではあるが、もっと面白いことがしたいという願望(向上心?)なのかもしれない。他者が何かに夢中になればなるほど、夢中になることがなければ焦ってしまう。焦るのはよいが、開き直ってしまうとよくないだろう。周囲のもの全てが下らないように思えた時こそ、全てのことに着手するべきだ。後半では美しい風景に感動する。心が動くということが大切だ。
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Posted on 2023/01/15 Sun. 20:28 [edit]

category:   2) 生き方を間違えてみる

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『あめのひのえんそく』感想   

(作絵:間瀬なおかた、ひさかたチャイルド、2003年)バスで遠足。雨天決行のぶどう狩り。子どもの目から見るバスは巨大だ。雨はイヤだが実は雲は薄い。雨の雰囲気がよく描かれる。みるみるうちに風景が変わっていく。トンネルを抜けると、もみじ山、かえで山、たんぼ。絵本の範囲で広い空間を表現できている。じっとしていて体は疲れるが、風景が変わってテンションが上がる。中にはバス酔いの子もいるはず。みんなで同じ体験をしていることに意味がある。晴れてきた時には先生も友達もみんなで喜ぶ。その向こうに虹が見えてさらに歓喜。仕掛け絵本としても素晴らしい。家に帰って父母に話したくなる。
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Posted on 2023/01/15 Sun. 20:26 [edit]

category:   3) 乗り物で遠くまで

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『どうして どうして』感想   

(作:トニー・ミトン、絵:ポール・ハワード、訳:アーサー・ビナード、小学館、2009年)こぐまが母くまに質問をする。なぜ太陽は明るいのか、なぜ風が吹くのか、森の道が曲がっているのはなぜか、小川の水が流れるのはなぜか、なぜ雨が降るのか、なぜ雷が落ちるのか。これらの質問を持つためには、こぐまが暇であり、余裕があり、しかも現象とその原因とを区別できるためである。こぐまに対して母くまはやさしく答える。こたえが正しいかどうかは重要ではない。世界はこぐまを温かく受け止めているということ、自然界は愛で満たされているということを伝えているかのようである。非科学的、宗教的でさえあるが、こぐまは幸せそうである。
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Posted on 2023/01/15 Sun. 20:25 [edit]

category:   1) 学びとは何か

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『はなになりたい』感想   

(作:すまいるママ、東京書店、2017年)かわいそうだという理由で獲物を食べずに死んでいく話。私はこの設定に納得できない。他の動物を食べてきたライオンが、独りぼっちで寂しいため、子ウサギの父になる。ライオンの親や友人はどこにいるのか。寂しいから親になるのは変では。子ウサギはなぜ家を出たのか。子ウサギはライオンが実の親を食べたことを理解したのか。その後、ライオンが拒食になるのはなぜか。ライオンの墓の前で子ウサギが幸せな気持ちになるのはなぜか。もう全てが支離滅裂。かわいい絵と矛盾を含むどぎつい話は合っていない。フェルト人形で遊びたい気持ちにならない。
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Posted on 2023/01/15 Sun. 20:24 [edit]

category:   4) 父親の存在

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『くさはら』感想  

(文:加藤幸子、絵:酒井駒子、福音館書店、2008年)母父兄妹の4人で河原遊び。妹は蝶を追いかけて、草原に入り込む。風が吹くとまるで波のよう。腰を降ろすと葉に囲まれた狭い空間。川や鳥の音はむしろはっきりと聞こえてくる。自分だけの場所と思いきや、母が見つけてくれた。なんとも言えない空気感、光の加減、家族のあたたかな表情、妹の息遣い、すべてがリアルに描かれる。素晴らしい表現だと思う。やさしい家族だからこそ、家族から離れて動植物の姿を見ることができる。そうこうすると今度は自然に圧倒され、自分の存在が消えかかる。母がみつけると、私はここに生きているという実感となる。
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Posted on 2023/01/11 Wed. 20:31 [edit]

category:   1) ここは私の居場所

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『星につたえて』感想  

(作:安東みきえ、絵:吉田尚令、アリス館、2017年)くらげと流れ星が会話をする。強烈な好意をいだいたようであるが、言葉が出なかった。流れ星は数百年後に帰る。くらげが死んだ後、その言葉を子どもや子孫たちに伝えていく。好意の言葉だけが伝わるが、流れ星に対してという点が忘れられてしまった。人々は好意の言葉をよく使う。そこで流れ星が再び帰ってくる、という内容。くらげと流れ星がなぜ好意を持ったのか分からない。自分の好意を、自分では言えず、代わりに子孫が伝えるのも分からない。だいすきという言葉が強烈。絵は綺麗だが意味は分からない。最近、恋愛と生命を混ぜる絵本が増えた。
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Posted on 2023/01/11 Wed. 20:30 [edit]

category:   2) 死期を感じる時

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『みんな びっくり』感想  

(作:長新太、こぐま社、1983年)象が昼寝をしていると子猿がイタズラをした。象のおしりに大きな顔を描いたのだ。象は知らない。蛇、ゴリラ、ワニらは、おしりの顔を本物だと思って困惑する。みんなが離れていき、象は不安になる。猿は謝ってラクガキを消す。おそらく、本書を読んでいる子どもたちは大笑いするであろう。象のおしりが顔だとするならば、本当の顔はおしりに見えてくる。しばらく眺めていれば、このラクガキも本当の顔のように見えてくる。何かを語っているかのよう。そんな想像でますます笑える。不謹慎かもしれないが、子どもはこういうイタズラをしてみたいはず。
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Posted on 2023/01/11 Wed. 20:29 [edit]

category:   3) 認識を覆す

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『おうさまがかえってくる100びょうまえ!』感想   

(作:柏原佳代子、えほんの杜、2018年)王様が不在時、部下たちが王様の部屋で自由に遊ぶ。突然王様が帰ってきた。部屋に到達するまえの100秒間で全てを元通りにするべし。パニックになる部下たち。寝ている奴を起こし、大慌てで制服に。数えているだけだが、部下たちの叫び声が聞こえてくる。その思いがよく伝わる。部下たちは困っているが、見ているこちら側は笑ってしまう。いつもの様子と比べればその違いを発見できる。地位や立場が違うと緊張したり萎縮したりするが、こうやって隙を見ては転倒するとよい。威張っている王様よりも、ドタバタしている部下の方が人間的で魅力的である。
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Posted on 2023/01/11 Wed. 20:28 [edit]

category:   2) その一生懸命さが面白い

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