『にぎりめしごろごろ』感想  

(作:小林輝子、絵:赤羽末吉、福音館書店、1994年)日本人の自然観、道徳観、宗教観が詰まっている。善い爺さまは富にありつけるが、悪い爺さまは全てを失う。にじりめしの扱い方でその人の生き方が分かる。悪い方の爺婆の姿は滑稽だ。ところで「悪い」とは何か。自己利益を追求し、それ以外の全ての周囲に対する優しさや配慮を欠く。そして全てを操作できると信じ、策略をはりめぐらして目標到達を目指す。本来、富というのは、真面目に生きてきた結果であって目的ではないはずだ。富に目がくらんで生き方を間違えてしまう。現代社会における企業、さらには行政さえも「悪い」存在なのかもしれない。
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Posted on 2019/10/06 Sun. 21:47 [edit]

category:   1) 自己の誇示

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『すきになったら』感想  

(作:ヒグチユウコ、ブロンズ新社、2016年)少女はこのワニが好きだという。周囲にとってすればワニのように見えるということか。彼女は、ワニの中に何か魅力を見出したのであろう。それは何か。ワニはどう思っているのか。すきになるとその相手だけに関心が向いてしまう。相手を知ることと自分を伝えることに強い力が向かう。二人の世界は深まるが、逆に外の世界は消えてしまう。やがて多様で変化に富む感情は消え、抽象的な単一体へと向かう。一途な感情は、とどまることを知らない。暑いとか寒いといったリアルな身体的感覚は薄くなる。バックは黒で描かれる。これはおそらくホラーなのだ。
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Posted on 2019/09/15 Sun. 18:35 [edit]

category:   5) 恋愛とは何か

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『およぐ』感想  

(作・絵:なかのひろたか、福音館書店、1981年)いきなり泳ごうとするから失敗する。ますは「浮く」ということを知るべきだ。人間は自然と浮く。風呂でも浮く。最も怖いのは顔に水がかかり、視界が水によって遮られることだ。本書を見て勇気を出したい。頑張る主人公を見て、パニックに陥りがちな自己を想起するとよい。一つひとつ手順を踏み、少しずつ慣れていけばたいしたことはない。パニックにならずに落ち着いてゆっくり動けばいい。本書は泳ぎ方を示しているのではなく、水の中で落ち着いて行動するということの基本原理を示している。それが出来れば泳ぐことはむしろ簡単なことなのである。
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Posted on 2019/09/15 Sun. 18:33 [edit]

category:   2) 物質の仕組み

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『どんぐり かいぎ』感想  

(作:こうやすすむ、絵:片山健、福音館書店、1995年)森の木々たちがどんぐりをたくさん作る。落ちたどんぐりを動物たちが食べ尽くしてしまい、次の木が育たなくなってしまう。特に文字と絵の配置がよい。文字を読んだ後じっくりその美しい情景を眺める。是非、音楽と合わせて聞きたい。動植物の声や表情が浮かび上がる。生きるか死ぬかの瀬戸際で、必死でもがき苦しむ。悩んだり考えたり、試行錯誤しながら生きている。それは壮大なドラマである。森は全体として生きている。この話を「食物連鎖」などの冷たい言葉でまとめるべきではない。名作絵本だ。自然を理解するというのはこういうことだと思う。
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Posted on 2019/09/06 Fri. 23:16 [edit]

category:   6) 自然への畏敬

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『おちばいちば』感想  

(作:西原みのり、ブロンズ新社、2011年)森の中が落ち葉やどんぐりでいっぱいになる。子どもはテンションが上がる。そんな時には虫たちの視点で遊べると良い。そこには市場があった。自分が小さくなればそこに行ける。人間の落した空き缶や空き瓶は自由に使おう。個性豊かな店が並び、様々な会話がある。人間界と同じだ。興味深いものがたくさん並ぶ。それを真似て作ってみたくなる。先を進むと巨大な魚市場もある。落ち葉が強い風に舞う。まるで無数の魚が大空を飛んでいるかのようだ。子どもたちが森の中で遊んでいる時、意識の中はこんなふうになっていると思う。大人が忘れた遊び心か。
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Posted on 2019/08/31 Sat. 22:10 [edit]

category:   3) 遊びの場

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『このママにきーめた!』感想  

(作:のぶみ、サンマーク出版、2017年)私は否定的だが売れているようだ。なぜだろう。自分の意思で子どもを産むということが強く言えない人、誰かに褒めてもらいたい、感謝されたいと思う人、外見を重視するという人、言葉が汚くても気にならない人(自分も平気で使っている人)、全てを軽いトーンにしたがる人(重い雰囲気が苦手な人)、生まれてくる赤子が大きな力を持っていると信じ、出来ることならダメな自分を支えて欲しいと赤子に期待したい人。そんな人が感動しているのだろう。私はこの世界を共感しないが、この絵本で癒されている人がいるとするなら、そのことは大切にしたい。
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Posted on 2019/08/31 Sat. 22:08 [edit]

category:   3) 母親の迷い

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『かないくん』感想  

(作:谷川俊太郎、絵:松本大洋、東京糸井重里事務所、2014年)級友のかないくんが亡くなる。子どもたちの日常の中で一つの命が終わる。すぐに子どもたちの生活は戻ってくる。しかし、かないくんが存在したという実感は残っている。不思議な感覚だ。本書はそれを想起するおじいちゃんの話になる。だいぶ昔の話だったのだ。おじいちゃんの意識の中では、かないくんはまだ存在している。人間は死ぬのではなく、消えるのかもしれない。消えたからこそ強く存在する。おじいちゃんは死期が近づくにつれ、いっそう強烈に感じるようになる。まるで手招きしているかのようだ。この不思議な問いかけは、孫娘に継承される。
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Posted on 2019/08/24 Sat. 21:53 [edit]

category:   2) 死期を感じる時

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『グラファロ:もりでいちばんつよいのは?』感想  

(作:ジュリア・ドナルドソン、絵:アクセル・シェフラー、訳:久山太市、評論社、2000年)ネズミはキツネやフクロウに食べられそうになると、グラファロの話をする。巨大で力強い怪物、架空の存在だ。グラファロが友達と分かればみんな逃げていく。しかしある日、グラファロと出会ってしまう。ネズミは、今度はグラファロを騙そうとする。ネズミは、まともに戦えばどんな相手にも必ず負けてしまう、小さくて弱い存在である。しかしネズミには知恵と勇気がある。さらにはコミュニケーション能力もある。赤の他人でも本当の友達のように語れる。現代社会においては、何にも物怖じせずに策略を立て、自己を有利にもっていける存在が最も強い。
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Posted on 2019/07/13 Sat. 22:57 [edit]

category:   4) 恐怖心を乗り越える

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『ぼくにきづいたひ』感想  

(作:杉山亮、絵:片山健、理論社、1995年)親たちに連れられて神社へ向かう。子にとっては退屈な時間。気持ちが乗らない、曖昧な時間が描かれる。ぼんやりしていて、心が動かない時間。しかし突然、音や匂いや、周辺の世界がリアリティを帯びて感じられる。以前の記憶が蘇る。過去に記憶している深い感動と、今自分がここで体験している感動が同一のものだという自覚。自分がここに存在するという感覚である。感動というのは、自分の中身が大きく揺さぶられる感覚だ。揺さぶっているのは外界である。自分が壊れるからこそ自分に気づく。自分という地点によって、周囲の全てに感動できるのだ。
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Posted on 2019/06/29 Sat. 22:03 [edit]

category:   1) ここは私の居場所

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『桃太郎が語る桃太郎』感想  

(絵:岡村優太、文:クゲユウジ、高陵社書店、2017年)桃太郎から見る他者、風景、桃太郎の思いが直接的に描かれる。新しい試みとして興味深い。ただし私は否定的。桃太郎中心で描いてしまうと、今度は犬たちや鬼の心境というものが見えにくくなる。桃太郎が脅えているというのは、一つの解釈である。その部分は読者が想像すべきところではないか。また桃太郎はこんな思いでしたと語られると、それ以上に推察する気持ちが無くなるのではないか。全ての登場人物の心境を深く推察するためにも、事実を淡々と語るような客観的な描き方が適当だと思う。また桃太郎は、カッコ良い存在、理想像であって欲しい。
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Posted on 2019/06/13 Thu. 22:22 [edit]

category:   1) 脅威と戦う

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